第15話 一番素敵な贈り物

かすみの残る力は、後3つ。

楽しみにしておこう。

苗字が違うのは、現代でもよくあることなので、気にしない。


「まーくん、ちょっといい?」

「何?かすみ」

イラストを描いていると、かすみが入ってきた。

「私、買いたいものあるんだけど、付き合ってくれるかな」

「いいけど、何買うの?」

「ひ・み・つ」

女の子がこういう笑顔をする時は、裏がある。

でも、散策するのはやめよう。


「じゃあ、下で待ってるね」

「その格好でいいの?」

「好みの服ってある?」

「持ってるの?」

「ううん、今はないけど、すぐにお父さんに取り寄せてもらう」

「じぁあね・・・」

僕は、リクエストを出した。

一応、ティーンエージャーなので、それなりに・・・


「この時代では、そういうのが流行っているんだね」

「いや、そうでもないけど」

「OK」

かすみは、下に下りて行った。


先日、自然乾燥するとか、同じ服をたくさんあるとか言ってたけど、

未来のお父さんから、送ってもらってたんだな。


かすみは、働きたくても働けない状況だから、仕方ないか・・・


下へ行くと、既にかすみは僕のリクエストした通りの格好をしていた。

女子高生らしい私服とだけ言っておこう。


玄関を出ると、かすみが腕をからませてきた。

「かすみ?」

「まーくんと、こうやって歩くの楽しみだったんだよ」

かすみは、笑顔を向ける。

「まーくん、慣れてないよね?」

「悪かったな。どうせ、彼女いないよ」

「じゃあ、私はまーくんの腕を奪ったんだね」

もし、本当に彼女がいたら、こういう感じなのかな・・・


近所のショッピングモールに着く。

「まーくん、ここだよ。買いたいもの。

付き合ってくれるよね?」

「そのつもりで、連れてきたんでしょ」

「うん」

かすみは、この時代は知らないので、ナビは必要か・・・


かすみの買いたいもの・・・

それは、この時代の女子高生なら、みんな持っているものだった。

かすみの時代にはないらしい。

ネットか何かで、憧れたんだろうな・・・


リップスティク、香水、ひらひらのミニスカート・・・

それを見ているだけで、僕は楽しかった。


「ねえ、まーくん。先に帰っていてくれる?」

「大丈夫なのか?」

「うん。もう道は覚えたし、もうひとつ買いたいものがあるの」

「何?」

「内緒」

そういって、走って言った。


いろんな意味で不安になる。

でも、かすみなら自力で解決できるだろう。

僕は先に帰宅した。


程なくして、かすみが帰ってきた。

「お帰り、かすみ。大丈夫だった?」

「うん、はいこれ」

かすみにリボンのついた、包みを渡される。


「5月26日のお誕生日、おめでとう」

「えっ、どうして知ってるの?」

「初対面の時、言ったよね。」

(そういえば、そうだった)


「はい、プレゼントだよ」

「ありがとう。かすみ」

女の子から、プレゼントをもらうのは初めてだ。


「開けていい」

「うん」

包みをあげる。

それを見て、僕は驚いた。

そこには、今の僕に必要な物が入っていた。

そして、何よりも欲しい物が・・・


「かすみ・・・ありがとう。嬉しいよ」

言葉にするのは苦手だ。

でも、精一杯の想いは込めた。

かすみは、わかってくれたようだ。


「どうしたしまして」

「かすみ?」

「まーくん、今後ともよろしくね」


プレゼントもそうだが、かすみがいる誕生日。

それが、一番の贈り物だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る