第98話
「さーて、どう攻め込むべきか、とにかく魔法だ!」
ひたすらに、魔法を打ち出す。これ以外に取り柄がないのだから仕方ない。
ポイズンニードル、メディックゴブリンを倒した場所と蓮さんとの間には距離がある、このままとにかく近づかせなければ毒で消耗するだろうし、勝てる!
「MPが豊富だと小細工もいくらでもできるという者ですね、ですが、強行突破するまでですわ!」
しかし、蓮さんは僕の毒針の乱射を意に介さず、突っ込んでくる、ダメージ覚悟の特効、再び出したすーさんの防御力に任せて耐えようとするが。
「捕まえましたわ、さぁ、今度こそ、リングアウトなさい!」
再び、空中へと投げ飛ばされる、しかし想定内だ、すぐにすーさんにリングに伸びてもらい、今回も戻ろうとする。
「風刃!」
しかし、それは叶わない、すーさんがリングにその体を伸ばした時、風の刃が切り裂いてしまう、すーさんことスライムは魔法に弱く、ろくに鍛えてもいないのでその一撃で死んでしまう。くっそ、ファイアボム!
「おおっと! 蓮ちゃん、再びコジっちゃんを投げ飛ばす、しかしスライムによってリングアウトは免れ……それも読んでいたー! 蓮ちゃん風魔法で体を伸ばしたスライムを撃破! しかし、コジっちゃんも負けていない、あれは炎か! 爆風で無理やりリングに吹き飛ばされ戻ってきた!」
実況の言う通り、ファイアボムは炎の爆発を出す魔法。その爆風と衝撃でリングになんとか転げ戻るが。
「今がチャンスですわね、さぁ、覚悟なさい!」
転がってきた僕の体に跨り蓮さんは、その拳で顔面目掛けて殴ってくる。
くそ、ここまで来て負けてたまるか、まだだまだ僕には策がある。
周りの観客は蓮さんの勝ちが決まったといわんばかりに歓声を上げていた。
「コジっちゃん、ここまで奮戦を見せてきたが、ここでおしまいか? 根性を見せるか、さぁ、どっちだー!」
「立つのよ、コージィ、あんた、ここで負けるつもり! 死んでも勝ちなさい!」
実況の声と一緒にサクの声が聞こえる、死んだら勝てるもんも勝てないだろう。
さて、だが、ここで負けるのだって、僕は嫌だ、先も言ったが、僕にはまだ策がある
「まだだ、まだ負けてないぞ! 来てくれ! 僕の友達!」
体を動かせずとも、僕には呼ぶことができる奴がいる、そう、いつもの彼だ。
「おおっと! コジっちゃんが、何かを呼んだぞ!」
「おそらく、契約魔物ジャン? でも現状、片手だけでも動かせない限り、契約や使役の変更は……!」
「おっと呼ばれて出てきたのはゴーレムだ! コジっちゃん、ゴーレムを呼んだ!
本来ゴーレムは使役する事が出来ないはずがコジっちゃんはそれを使役している魔法使いの妙技という奴だろうか! 蓮ちゃんへとゴーレムは攻撃を仕掛ける! コジっちゃんその隙に脱出! しかしゴーレムの方は蓮ちゃんの連撃であっさり沈んだ!」
「そりゃそうじゃん、ゴーレムは打撃弱点、格闘はもろ打撃じゃん」
「まずいわね、コージィはアイテムでゴーレムを操ってるけど、あのゴーレムは友情ってスキルを持ってる。やられるとコージィのステータスを大幅に下げるわ、まだ、これで勝ち目があるっていうんでしょうね」
実況の言う通り、なんとかカーレッジの攻撃を避けるため、僕の上から避けた蓮さんはそのままカーレッジを破壊する。ここまで出し渋ってたのはこれが理由。
さてと、これが正真正銘、最後の策だな。契約状態よし、ゴーだ。
「も、もう嫌だ! もうたくさんだ! 来るな! こっちに来るんじゃない!」
僕は錯乱した演技をして杖を振り回しまくる。その姿に会場の観客が全員冷めると同時にブーイングの嵐が巻き起こる。
「コジっちゃん、とうとう戦意喪失か! おおっと! 物は投げないでください!」
会場からカップやら、食事を食べた後のプラスチック容器が飛んでくる。
情けない姿を晒すのはきっと盛り上がってた観客には水を差す行為だ。
しかし負けたくないんだ、サクの為にも自分の為にも!
「ここまで中々の戦ぶりなので、勝っても負けても認めようとは思ってましたのに、その体たらく、一瞬で冷めましたわ、最後は顔面に一撃で終わらせましょう」
そんな僕に呆れ油断したようで。ゆっくりとこちらに歩いてくる蓮さん、いいぞ、そうじゃなきゃ。
「来るな、来るんじゃぁない!」
「振るだけ振って何も魔法は出さない、ネタ切れですか?」
やがて僕は一番端へと追い込まれ、目の前には蓮さんが立っていた、よし、ここだここが最後の勝負だ。
「ええ、そうです、ネタ切れですよ! 僕の魔法は所詮この程度ですよ!」
僕が言葉を言い切ると同時に蓮さんの後ろから狐が襲い掛かる。その不意打ちをもろに受け前のめりに体勢を崩しこちらに倒れる蓮さん。僕はすぐさま体を少しだけずらし避け、おまけと言わんばかりに自分でも体当たりでリングの外へ押し出す、これで僕の勝ちだ!
「なんだあの狐は! いきなり現れて蓮ちゃんへと攻撃した! 蓮ちゃんこの不意打ちには対応できず前のめりによろける! コジっちゃん、その隙を見逃さない! すぐさま半身によけ体当たりリングアウト! ここまでの攻防はなんと、たった一匹の狐の体当たりが決め手になり終わってしまった―――――!!!」
あの後、カーレッジがやられた瞬間すぐにごんへ使役魔物を変更。すぐさま召喚して透明化を使用させて、待機、合い言葉として【僕の魔法】で透明化を解除して攻撃と指示を出しておいた、情けなく逃げた僕に油断して歩くなんて行動をとったのが悪い。周りの観客が、ものすごいブーイングをしきりに出してくる、なんでそこで勝つんだよ! ふざけるなー! そんな勝ち方でいいのか! そんな感じで僕に対する、叱責と怒りのブーイングだ。
「いやー、今回の決闘、どうみますか? 解説の雛ちゃん」
「蓮の敗因は油断のし過ぎジャン、メディックゴブリンがもう一体、そうじゃなくてもあそこで近づかず遠距離魔法で仕留めればよかったじゃん、大将はサクの言う通り一癖も二癖もある戦運びだったじゃん、ただ徹頭徹尾、自分よりも使役魔物が目立ってたじゃん、決闘の内容は二流どころか三流じゃん。まぁ、テイマー・フェレット・オンラインのシステム上、契約と使役の力を使うなという訳ではないけど。」
「ああいう奴なのよ、でもまぁ、そういう所も含めて、頼りになる相棒だけどね、それにおかげ様で稼がせてもらったしね」
軍師殿は蓮さんと僕についてそんな苦言をサクは手にチケットを持ち笑顔でいた。そういえば、僕に賭けたとかいってたな、大分稼いだろうな。
「というわけで、観客共! お前らの文句は知らん! 今日の決闘はここまで、自分が出したゴミは片づけていけよ! 本日の実況は堺! 解説は!」
「天才軍師、伏龍鳳雛と」
「サク」
「で、お送りしましたー!」
決闘が終われば多くの人が負けた負けたとそれぞれの顔をしながら転移していく。イベントに向かったんだろうな。さてと。
「こんな勝ち方ですみません、蓮さん」
「いえ、油断した私が悪いのです、中々演技派でございましたね」
「泣く真似は姉弟喧嘩で必須のスキルですから」
姉と喧嘩したときは大抵、泣いて母さんに泣きついたものだ。
「そうでしたか、しかし、インビジフォックスとは驚きです」
「偶然でしたけど、いい仲間に巡り合えました、今日はお腹一杯になるまで牛丼食わせてやるからな」
最後の一撃の貢献者、ごんを撫で繰り回してやる、ふわふわもふもふだ。
そうしていると、実況席の片づけやもろもろを終えた軍師殿や堺さん、サクが来る。
「これで、納得いったじゃん? 蓮?」
「伏龍様、勝てずに申し訳ございません、もう少しのところでしたのに」
「別に気にしてないジャン、これを機に一層頑張ってほしいじゃん」
「はい! これからも精進いたしますわ!」
「さてと、ほんじゃま、これで一見落着、俺たちもコジっちゃんの作るクランに入る、それでいいのよね? 雛ちゃん」
「うん、大将、改めて僕ら永花、大将の作るクランに入れて欲しいじゃん」
というわけで、少し長くなったが、永花も誘えた、これで全員としよう。
さてと、時間は何時頃が良いかな? 早速、クランメンバー予定のみんなにメールを飛ばして、後は返事を待って、その返事次第で集合時間と場所だな。
「ようやくクランが出来るのよね?」
「ああ、水中都市の謎の解明、絢姫への対抗、今から楽しみだよ」
今日はカーレッジがまたしても死んだので、適当に町で過ごすか。
続々とメールが来る、集合時間と場所、決めないとな……
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