第75話

 ソーヤーが加わってから初めての金曜、明日から週末という事で今日からはサクのやりたかったことをやろうという事になったが、それは。


「私たちに足りないもの、それは何か、答えれる?」

「スキルとGそんでもってやっぱりG」

「それはソーヤー自身が足りないものだよね、うーん連携かな」

「………こんの男どもはあんたら、自分の見た目を省みたらどうなのよ」

 

 僕らは自分の姿を今一度見てみる、マジックベストに愛用のマント、使い古された樫の杖、うんどこもおかしくない。


「布の服と革ブーツ、そしてブロンズダガーと石ころ、由緒正しき初期装備だな」


ソーヤーがいい笑顔でサクに返す。


「そだねー」

「そだねー……じゃないわよ! 王都でそんな貧相な装備してるのあんたらだけよ、縛りプレイなの、二人してドマゾなの、バカなの、死ぬの?」

「しゃーないっしょ、転移魔法代でG全部使っちゃったし、それにここ数日でここらの魔物の攻撃は回避出来るようになってるだろ、攻撃パターン見切れば余裕だぜ」

「僕はカーレッジがいるからほぼ敵の攻撃は防げる、どうとでもなってるだろ」


 実際、ここまでの被ダメージはほぼほぼカーレッジを使役しているため、無いのである。防具の意味を為していない、ファッションって奴だ。


「こいつらときたら本当の事だから性質が悪い……せめて武器だけでも新調しないかしら。夏にはイベントもあるし少しでもスキル以外の部分で自己強化をするべきよ」

「ま、一理あるか、で目途立ってんの? 買うの、手に入れるの、作るの?」

「100万もあるし持ってても意味ないし使いどころか、で、ソーヤーの言う通り

どうするんだい?」

「勿論提案するだけ後は人任せなんて言うわけないわ、3人で王都から一度、こっち

西の方角を目指すわよ、こっちには鉱山があって、多くの武器生産プレイヤーは軒並みこっちに本拠を置いているわ。ここで腕のいい鍛冶師を見つけて武器を作ってもらおうと思うわよ、私もコージィも100万もあるからね、つくってもらう武器や防具だけど、魔物の素材を集めるのと鉱山で鉱物を集める、どっちかね」

「魔物の素材ならベンガルトラとオオカマキリのがあるね、何が作れるかは鍛冶師次第か、西に行く道中で面白い魔物に会えれば倒すのもありかな」

「俺は何にも持ってないな、どうするべ……出発はいつ?」

「明日にしましょうか、それまでは各自自由行動で」

「異議なし、ソーヤー、フィールドに出てスキル上げしにいくかい?」

「うんにゃ、時間あるならやりたいことできた、ちょっと一人でいくわ」

ソーヤーは転移魔法で出て行ってしまう、やりたい事があるなら仕方ないか。

「サクは何かやりたい事とかある? 手伝うけれど」

「それなら、あんたに加勢して貰いたいクエストあるから手伝ってくれない」

「構わないよ。で、場所はどこ?」

「場所はこっち、サファード西の森の中よ」

「え、その中って何もなかったんじゃなかったの?」

「ここまで何もないって情報しか掲示板に上がってないのは逆に怪しく思ってね

私が自力で調べてみたのよ、ずっと2週間くらい、そしたら、まさかのクエストが

見つかったのよ、なんと依頼主は森の……おっと、これ以上はいってからね」

「了解、しかしクエストか、何があるか、楽しみだね」

サクに言われるがままにサファードへ転移、西へ向かいグラバーを走らせる。

森に入っていきグラバーにも入れない場所へと進む。

「大分深い所というか、道がないけど、まだ先なの?」

「ええ、まだ先よこの調子だと夕方になるわね」

「やぶ蚊がひどい、カーレッジ、草踏み倒していけ」

たまらず、カーレッジを出して草を踏み倒してもらい進もうとすれば。

「コージィ、自然は大切にしなきゃだめよ」

「ええ~、いや、これ歩きづらいし、これくらいなら平気だろ」

「それでもよ……っと、そろそろつくわよ」


 サクに止められてしまったので、カーレッジは戻してしまう、あー、下草が痛い。

そうして下草に悩まされながら到着したのは一つの切り株がある場所だった。

切り株は樹洞になってしまっていた、これ人一人くらいなら入れそうな大きさだなしかもこの形ウィルソン株模してるのか、うわー珍しいスクショしよ姉とソーヤーに自慢しよ、さて、しかしここになにがあるのか?


「この切り株の中に入っていくわよ、入ったら目を瞑りなさい、そしたら声がするから、素直に質問に答えるのよ」


そう言うとどんどん奥へとサクはいってしまう。仕方ない、僕も入るとしようか。

そしたら目を瞑るんだったか、これで声が聞こえてくるはず……どうかな?


「聞こ……いま…か」


あ、本当だ声がする、なんかブツ切れでよく聞き取れないけど。


「聞こえていますか、聞こえていたら、お返事ください」


お、聞こえた聞こえた、そういうわけなのでお返事をしてだれなのか尋ねる。


「ありがとうございます、私はティファナ、妖精郷の主です」


妖精、僕は今とてもファンタジーしてるぞ、これはいいねぇ。


「貴方が勇者様の言う私たちを救うもう一人の勇者ですか、」


勇者、それはないなぁ、僕は探索者だしね


「は、はれっ!? でも勇者様がおっしゃる、ぼろマントはつけてますし……多分そうですよね、妖精郷へご案内しますね」


その言葉と同時に浮遊感を覚える、そしてその後に地面に思い切り尻もちをつく。


「あだっ」

「情けないわねぇ、受け身くらいとりなさいよ、ようこそ、妖精郷に」

「この方が勇者様がおっしゃったもう一人の勇者様ですか、言いにくいですが

その……頼りないというか、ちょっと抜けてそうというか」


 僕の目の前にはジト目で尻もちをつく僕を見るサクと。 その横を小さな羽をパタパタとさせ飛んでいるピンク色の髪をした手のひらサイズの少女だった、小さい、もしやこれが妖精って奴だろうか。


「サク、それと初対面ですが、貴方はいろいろと酷くないですか……」

「すすす、すみません!」

「いや、いいですよ、その声は僕をここに呼んだかたティファナさんですよね」


 で、サク、ここは一体どこなんだよ立ち上がると同時に僕がサクに問いただせば、ここは先ほどから会話にも出ているが妖精郷との事。向こうの世界とは別の時間が流れる妖精の楽園だとか。かつては人と交流もあったが、前時代の崩壊と共に交流が絶たれ。それからは自分たち妖精だけで自給自足生活をしている。


 あたりを見渡せば、ミニチュアサイズの家がいくつか作られており、そこからティファナと同じように羽をはやした。手のひらサイズ程度の人間が果物か何かを運んでいたり。地面には小さな畑もあったりと、確かに彼らの営みがあった。

サクに一匹の妖精が小さな羽をパタパタと動かし近付いていた。

その妖精の頭を指で撫でながら終始笑顔で有った。懐かれてるのかな。


「そういう妖精とか可愛いもの好きなんだね、じゃじゃ馬お転婆姫は」

「その呼び方やめてよ! 何、文句でもあるの」

「いいえ、何も、さて、君は妖精を愛でる為に来たのかな、勇者殿」

「そうだったわ本題は妖精が困ってる……」

「勇者様、上を、また来ました!」

「また来たのね、上を見なさい、あれが本題の魔物よ」


僕は上を向く、そこに飛んでいたのはこれまた大きな蛾であった








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