第71話
僕と小泉さんが山から降りて、小泉さんの足を休ませる為にもと。イベント集会テントの一画に座る、気になって調べたらあの学校行事とかで使うのって、そう呼ぶんだね、まんま過ぎてある意味びっくり。座らせた後は先生への報告を済ませる。
「さてと、戻ってくるまでしばらく休憩だね、何したもんか」
小泉さんは絶対安静なので、僕一人付き添いで降りてもすることが無いのである。
「ここまで来たら大丈夫だし、登りなおしたら?」
「今から登ってもおいつけないし、ケガしてる女の子はほっとけないよ」
「あっそ、なら、しばらく暇してるしかないわね。」
「そうだねぇ……しりとりでもする?」
「高校生にもなって、しりとりって」
「でっすよねー……ん? あれって」
二人で無駄話をしていれば、僕の視界に3人の女性が入ってくる。
携帯を取り出し、時間を見ても、下山するにはまだ早い気がする。
まあ、話しかけてこないなら、無視しておこう、小泉さんもいるし。
「おー、内山、小泉、無事下山出来たか、よかったよかった」
しばらくぼーっとしていれば、遠藤先生が向かいの席に座る。
「ケガしてたんなら、先生に言えば、休ませていたぞ」
「すみません、山登りの前までは痛みは無かったので」
「他に大事が無いなら、それでいいさ、内山も手当と下山とかお疲れ様」
「いえ、これくらいはしないとですよ、それに、最後まで登らずに済んだのはある意味幸運です、楽ができました」
「そうかそうか、それじゃぁ、今から、今日の飯盒炊爨とカレーつくりの野菜と米とか飯盒運ぶのを手伝ってもらおうか、悪いな、小泉、内山借りていくぞ」
「そ、そんな、僕は小泉さんの相手をするという崇高な使命が!」
「私の事は気にしなくていいわよ、内山君、存分と手伝いに精を出してきなさい」
そ、そんなぁ!? 楽が出来たなんて失言をするべきではなかった。
荷物運びの重労働をするくらいなら、山登りに行けばよかった!
そうして、僕は荷物運びに駆り出されることになったのだった。
「先生、これはどこに運べばいいんです?」
「それは、向こうの端に寄せておいておけばいいぞ、それで終わりだお疲れさん」
そう聞けば、指で場所を示してくれる、ようやく終わりか、疲れた。
ランニングとは別に腕の筋肉を使う為、腕がしびれてる感じがする
「やっとか、山登りよりもある意味きついぞ、野菜ってこんな重いんですね」
「まぁな、うちの叔父がトマト農家やってるが、収穫が毎回大変だとさ」
「それはお疲れ様です、それじゃ僕、小泉さんの所戻りますね」
「はいよ、そろそろ山登り組も下山途中だろうな、夕飯前に腹空かせておけよー」
遠藤先生の世間話を軽く流し、トイレの後で小泉さんの元に戻ることに。
…………ふぅ、すっきりと、あれ、さっきの女子達?
「小泉さん、足怪我して降りて来たんだってー、いい気味」
「生意気だし、自分が可愛いからって調子乗るなって感じ?」
「まじそれなー、アハハハ」
……うわぁ、聞かなきゃよかった、というかトイレの陰になんでいるかな。
「ああ、そういう事か」
少し考えれば解る事。しかし今ここに田中君の何がそう言う事なんだいホームズとワトソン君の真似事みたいなリアクションの無いことに一抹の寂しさを感じた。
早く戻って来ないかね僕は退屈で仕方ないよワトソン君。
「っちょ、誰だし!? って、内山君、もう山から降りて来たの?」
僕の漏らした声に女子の一人が反応する。
「まぁね、僕の班の小泉さんなんだけど怪我してね。」
「へー、そうなんだ」
「君達はサボりかな? だって、今の時間はまだ山から降りるには早いよね」
「ほら、山の天気は変わりやすいって言うじゃん、雨に降られるの嫌だし、早めに降りて来たの」
「僕、数十分前にも君を見たんだけど? ハンガリーに行く道らへん」
ぎくりという顔をする、うんうん簡単にバレる嘘をよくつくものだ
「まあ僕は先生でもなければ、山登り途中でさぼれてラッキーって思うくらいにはサボりたい欲求はあった、だから丁寧に説教しようだなんて思ってない」
この言葉に女子達はホッとする、まあ山登りに関しては僕は本当にどうでもいい。
だが、さっきの話に対しては、少々義憤を抱くと言う物だ。
「でもな……さっきの話、聞いてたからな」
出来るだけ、声のトーンを落として低い声で言えば、女子達はヤバいみたいな顔で蒼白になった。かなり脅しになったかな我ながら良く出来た物だね、うん。
「き、聞いてたの?」
「ばっちりと、まぁ僕は警察じゃないから、君達をこれ以上どうこうできないし
する気もない、謝って来いとも言わない、これ以上はやめとけとだけ言っておく」
「小泉さんが生意気でちょっと可愛いってだけで、ちやほやされて調子乗ってるからだし、私達悪くないし?」
「あっそ、も、どうでもいいよ、何を言う気もない、時間前には戻ってきなよ」
それだけ最後に短く言って女子達の前から去る。美人ってのも考え物なのだろうな渡辺さんなんかは人当たりもいいしクラスからは男女を問わず人気だ。園田さんもハーフだけど、委員長で人気者。
他の美人、僕の知る限り立華さんは彼氏がいるし。冴島さん当たりはああいうのには人気ありそうだよな、必然そうじゃない小泉さんはいい攻撃対象なのかもねぇ。
そんなことを考えながらテントに戻る。
「おかえり、お手伝いお疲れ様、内山君」
「ありがとう、小泉さん、まだ皆は戻ってきてないみたいだね」
「そうね、ねぇ内山君」
「なに? 小泉さん」
「折角の林間学校なのに、怪我人の相手させて本当にごめんなさい」
「何度謝れば気が済むのかな? 別に怒ってないし、謝ってもらいたいわけでもないしね、さっきも言ったけど、山登りサボれてラッキー程度に考えてるさ、随分としおらしいよね、ゲームの時のじゃじゃ馬お転婆ぶりはどこへやら、あれかな? 怪我とか病気すると、気落ちして甘えたくなるタイプ?」
「そんな事無いわよ! ったく、あんたはあんたで真面目かと思ったら案外抜けてるし、意外と貧乏性だったり、見た目の雰囲気と中身とのギャップが酷いわよね」
「心外な、僕が案外と抜けているのは認めるけど、貧乏性とは言わないで欲しい。物持ちがいいと言って欲しいね」
「はいはい、それでいいわよ」
「よろしい、さて、もうそろそろしたら三人が降りてくるかな?」
「怪我無く降りてきて欲しいわね」
そんな雑談をしながら、山の入り口を見ていれば、ようやく三人が降りて来た。
細川君は田中君に肩を借りてぐったりしてたが、ケガはないとの事。
それから、クラスの人や別の人たち、さっきのサボりの女子も戻ってくる。
全員が戻ってきたところで、飯盒炊爨の説明が始まるのだった。
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