第24話

 カーレッジと契約したばかり急増タッグに巨大なカマキリそれも格上であろう存在とは酷ではないかなと思いながら、戦うことになったならば仕方がない、勝ってみせるさ。僕の目の前に立つ、カーレッジことゴーレムは油断なく構えを取る。

 

 威嚇のために振り上げていた鎌をカマキリが振り下ろしてくる、早い、直撃は免れないか、盾は壊れてしまっている、避けるにもこの速さは間に合わない、それならば、ここはカーレッジを信じる他ない、あの記述が本物であるのを祈るばかりだ。


 僕はその場に立ち、杖先をカマキリに向ける、今も頭上に鎌が振り下ろされるが、それを無視してとにかくウィンドアローを連射する。その全てが胴部に当たるのだがそれでカマキリはひるむでもなく、とうとう目の前という所まで振り降ろされた瞬間だ、ゴーレムはその鎌を腕をクロスして受け止め防御する。


 鎌と石がぶつかり合う、鈍い音が森に響き渡った。カーレッジは一歩も下がることなく見事にその攻撃を受け止め、僕を守ってくれた。


「いいぞ!カーレッジ、そのまま耐えててくれよ………」


カーレッジに応援をしながら、杖先はカマキリに向け魔法を連射。

やがてカマキリは鎌をゴーレムから離すと次は左右から挟み込む形で僕らを切り裂こうとしてくる、やばい、さすがのカーレッジといえど片方しかガード出来ないはず、どうする!?そんなふうに困惑しているとカーレッジが僕を抱き込んだ。


 鎌が両脇から襲い掛かるのを身を挺してかばったのだ、大した献身だ。

鎌はゴーレムの胴体をそのまま挟み真っ二つにしようと力を入れる。

しかし、その程度ではカーレッジの体はびくともしない。この隙に体の隙間から魔法を鎌へと射込みまくる、一発は微々たるものだろうが、それでもダメージを与えるためにも撃つほかないのだ。


 カマキリはこれ以上の攻撃は不毛だと思い、鎌を手元に引き戻す。

ここがチャンスだ、僕は懐に潜るべくダッシュする、あの鎌は懐には決して届かないその安全地点に入り込みさえすれば、こっちの餌食だ。その目論見は成功し、腹の中に入り込む、ここに最大のダメージを与えられるこちらの必殺をお見舞いする、ベンガルトラにも発射したウインドランス、それをとにかく発射しまくる、ここで決めなれなければ後はない、MPを使い切るくらいで連射しまくる。


 カマキリはカーレッジに切りつけではダメージが入らないとみて、鎌を突き出して

威力重視の一撃をしきりに繰り出していた、カーレッジはその連撃を腕を前に出してガードして耐えている、もう少しだ、もう少しだけ耐えててくれ、このまま削り切ってやる、倒れろ、早く倒れてくれ、祈りながらも杖から魔法を繰り出すのはやめない、しかし、それにも限界は来る、とうとうウィンドランスが撃てるだけのMPが切れてしまうのだった。カマキリはまだ、生きている、そして、とうとう僕の存在に気付いてしまうのだった、万事休すか………。


 羽根を広げ後ろに下がると、僕に向かって片方の鎌を振り下ろす、避けろ足よ動いてくれ。足に鉛でも仕込まれているのかと思ってしまうほど、僕の足は遅くその攻撃をよけきることはできなかった、しかし、死んではいなかった。


「か、カーレッジ!?ど、どうして、さっきまでそこに!?」


 僕の目の前にカーレッジが立っており、鎌を受け止めていたのだった、既述に会った通りであればゴーレムは鈍重だ素早い移動なんてできないはず、なのに、いや、今は悩んでる暇はない、最後の一か八かに出る、これで勝てなかったら、負けは確定、いくぞ、成功させて見せる!。


「ウィンドジャンプ!」


 ウィンドランスの消費量は高いが、この強化魔法ウィンドジャンプは消費は少ないといってもこれで本当のからっけつなわけだが、僕はカマキリの目の前まで跳躍し、その頭上を越える、複眼が僕を捉える怖いなこれ。


 このまま奴の顔に乗って、直接杖を刺してトドメを刺そうとするが、それをよしとするカマキリではなかった、残った片方の鎌が僕を襲う、っく、一撃なら耐えれるか!? 生命が上がるスキルも伸びてきてる、耐えきれればやれる! 頼む!


 しかし、その祈りは杞憂に終わった、いい意味で、さっきまで地上で鎌を受けていたカーレッジが空中にまるで瞬間移動でもしたかのように出てくる、そして鎌を全身で受け止めていたのだ。どうしてこうなったのかは追及する暇はない、なんとかカマキリの目玉に乗ることに成功、樫の杖の先端を目玉に何度も何度も突き刺さす。

 

 血飛沫の代わりに膿のような色の体液が目玉から噴き出す、およそ魔法使いの戦い方ではないだろうが、これしか方法はない、僕の服も外套も顔もその体液により濡れていくがそれを気にすることもなくとにかく突き刺しまくる、顔面それも目玉ということで急所だったのか、とうとうその存在に変化が起きた。


 カマキリがふらふらとその胴体を地面へと横たわらせ、ひっくり返り、そのまま青い粒子となって消えてしまう、僕もよろめきながらもなんとか地面に着地する、先に着地していたカーレッジはなんともないといった感じにその場に立っていた、初陣は大勝利に終わったのだ、いや、ギリギリの勝利、辛勝と言う方が正解か。


 しかし、カーレッジがまるで瞬間移動したかのように僕を守った方法は一体なんなんだ?何かスキルの効果か?ゴーレムのスキルを一つ一つ確認する、つか、強いな、物理攻撃と魔法攻撃半減って、並大抵の攻撃は効かないのでは?そしておそらくこのスキルが活躍したのだろう。


スキル【友情】

【説明】

君達には友情と言う繋がりが存在する、それは時に使役と契約の力を凌駕する。

【効果】

・使役者がダメージを受ける時その場にワープしてダメージを肩代わりします。

・いかなる状況でもこの魔物を使役状態にすることが可能です

・この魔物が死亡状態だとプレイヤーのステータスが半減します


 なるほど、あのリングの効果で取得した特殊スキルか、強い、強いがデメリットも痛い、ステータス半減は重たいこのゲームで契約した魔物が死亡状態になった際の回復はリアルで1日を待つ必要がある、まあ、カーレッジの生存能力は馬鹿に高いのでなんとかなると思う。


 さて、戦闘の後はせっかく倒したんだ戦利品を頂きたいものだ、でてきたのは、僕を殺そうとしてきた鎌であった、そのままの大きさではあったが、インベントリに軽く収まる、これ、何に使えるんだろ?


 さてと、テントが崩壊してしまった今、僕の帰還地点はファウストの街に再設定されてるだろう、予備のテントも無い為、再設営は出来ない、テントの残骸を片付け、帰る準備をする、ここにまた来るにしても、あの草原の踏破は時間がかかる。


 それに、ビル氏の願いを叶えるためにも、いい加減、ファウストを出るべきだろう

片付けを見守っていたカーレッジに向き直る、その顔は笑顔のままだ、まぁ、落書きゆえに変わるわけがないのだが。


 所詮はゲームの中の物語でビル氏の人生もカーレッジの存在も架空の存在だ。

でも、それでもいいんだ、そうだとしても、僕はビル・カーターと言う人に敬意を払い、その遺志を受け継いで、カーレッジと共に往こうと思う。


 姉さんが傭兵団としてRPしているようにこれも僕なりのRPって奴だ。


「片付け終了!さぁ、カーレッジ、世界を見に行こう、ビル・カーターさんが君に見せたかった世界、僕が存分に見せてあげるよ!」


僕はそう言ってから帰還魔法を唱えてファウストの街へと戻ることにしたのだった。

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