心の余裕
「ご主人様」
「はっ!?」
あぶねぇ!
流されるところだった!
「とにかく、俺とお前の間に血のつながりはないよな?」
「でも、妹分なら問題ないでしょう?」
「妹分かぁー……」
確かに問題はない。
だが、兄に見捨てられたからすぐにというのはいささか短絡的ではないか?
……いや、奥に{不安}が見えるな。
あの言動から察するに、親との関わりはどういった形でかは知らないが、薄かったのだろう。
そして、兄だけが近しい存在であったが、それもなくなったと。
要するに、心のよりどころが欲しいのだ。
そして、社長という立場から俺が一番自分を見捨てにくいと判断したのだろう。
「まぁ、その話は保留だ。ほら、リアーネも離れろ」
「保留……」
渾身の
ぶっ刺さってたから。
古今東西(日本だけだが)妹キャラというのは基本的に好まれる。
実妹であれ義妹であれ、幼馴染であれはたまた後輩でもいい。
それは、夢を描くからではないだろうか。
妹がいない者は、自分を頼ってくれる年下の女の子がいたらどんな感じなんだろうな、と想像する。
逆に妹がいる者は、こんな妹でなければどんな妹が良かっただろうか、と想像する。
「ご主人様?」
「はっ!」
何を哲学してたんだ俺は。
囚われすぎだろ、妹に。
「向こうの動きは?」
「大人しくしているようですね。特に動くような様子はございませんが……」
「まぁ、そうだろう。ただ、あんなことをしでかす奴らだからな。俺たちでなければまた何をしてもいいと思っていそうなのが怖いな」
クスリとアンが笑う。
「なぜ笑う」
「いえ、ご主人様も優しくなられましたねと思いましたので」
「何のことだ?」
「以前までであれば彼らが周りに及ぼす被害など気にも留めなかったでしょうから」
「……」
確かに。
それだけ周りを見る余裕が出来たという事だろうか。
こっちの生活もかなり長いしな。
「ただいまー」
「お、お帰り、リオン。どうだった?」
「疲れたよー」
フラフラとソファーに倒れ込むリオン。
体力お化けのリオンがこんなになるところは初めて見るな。
「合格だったのか?」
「一応ねー」
今日は閻魔としての仮免試験だったらしく、いつもはリオンに弱いアンリさんも厳しかったらしい。
だが、仮免に合格したことによりほぼ確実に閻魔になれるようにはなったみたいだ。
「凄いな、リオンは」
「でしょー? もっと褒めてくれてもいいんだよー?」
「あぁ、本当に凄いな」
リオンは目をぱちくりさせる。
「……なんだ?」
「やけに素直だなーって思ってー……」
リオンが目標をかなえつつあるのに、俺はいつ帰れるのかもわからないってちょっと気分が落ち込んだのかもな。
考えても無駄だとわかっているのだが、考えないでいられるかはまた別の話だ。
「今日なら一緒に寝てくれたり……?」
「ダメだ。お前ら」
「はい、リオン様、我々はあちらですよー」
「あぁー……」
3人に引っ張られて遠ざかっていく声を尻目にベッドに入る。
「主、主」
「なんだよ」
「わしらが向こうに帰るための引き金は何なのじゃろうな」
「俺が知りたいよ……」
それがわかんないからこうやって我慢してるんだから。
ただ、そうだな。
落ち着いて考えるのは久しぶりかもしれない。
あぁ、レインに会いたいな……。
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