気合いが違う

「で、お前は家で何してたんだ」

「なにも?」


 グニイィィィィ!!


「わ、わしの頬が……」


 崩れ落ちるオーシリア。


「トロワ」

「はい。オーシリア様は孤児院のお子さん方と遊んでおられました。鬼ごっこやかくれんぼなどをして、働いている組が帰る際に一緒に帰る皆様をお見送りし、疲れて寝ころんでいたというところではないかと」


 ガーン、とトロワに「裏切ったな!?」という表情を向けているオーシリアだが、恐らく俺に口止めするように言っていたのだろう。

 メイドたちは、俺に仕えている(?)期間が長いオーシリアにもある程度敬意を払ってはいるが、あくまで俺に仕えているので俺への口止めなどできるものではない。


「なぁ、俺は陰ながら見守っとけって言ったのであって、一緒に遊んで来いと言った覚えはないんだが?」

「いや、ほらの? 遊んでおったら興味はこっちに向くし、図らずとも全員いるか確認するじゃろう? よって、その方が効率が良いのじゃ」

「ほーん?」


 オーシリアを見下ろし、圧をかける。

 曲がりなりにも慣れてきているオーシリアはびくびくしながらもわしは逃げん! という態度である。


「ほらー、リブレもあんまりいじめちゃダメだよー?」


 ひょいっとオーシリアを抱えるリオン。

 オーシリアが増長している原因の一端はリオンにある。

 何をどう思っているのかは知らないが、ちゃんと杖だというのも説明したにもかかわらず、オーシリアを俺の子供のように扱っているのだ。

 そして、リオン曰く「それなら私の子供でもあるでしょー?」ということらしい。


「オーシリアも、リブレにあんまり迷惑かけないようにねー?」

「うむ、わかったのじゃー」


 リオンの言う事はすんなりと聞いて抱きつき、胸に埋もれるオーシリア。

 許さん!

 色んな意味で!

 こんな横暴を許容してはならない!


 ベリッ!


「お前はリオンに甘えるな!」

「甘やかしてくれるんじゃからよかろうよ!」

「お前にはプライドというものはないのか!」

「人の所有物になった時点でそんなものはとうに捨てておるわ!」


 不毛すぎるやり取りである。


「リブレも私に甘えたいなら、そう言えばいいのにー」

「いや、違うんだ」


 違わないんだが、違うんだ。

 そこじゃないんだ。

 こちとら鋼の意志を以て我慢しているのに、それをのうのうと享受しているのが気に食わない。

 ただ、それだけなのだ。


「許せねぇ!」


 気合いが違うぞ。


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