一方その頃②

「あ、おかえりー」

「お、リオン。今日は早いな」

「お休みを貰ったんだー」


 魔王になるための勉強ってお休みがもらえるシステムだったんですか。

 いや、休息が必要なのもわかるんだけども。

 そういう世襲制の勉強はずっと続くイメージがあるというか。

 今までしていなかった分も溜まっていたりするのではと思うのだが。


「お父さんもそう簡単には辞めるつもりはないだろうからねー。寿命も長いし、そんなに急がなくてもいいんだよー」

「いや、それでもだろ」


 だってさ、一世界の神になるんだぜ?

 努力とかいう次元の話じゃないじゃん。

 そのための努力ってもう何すればいいか想像もつかないし。

 細々とお金を稼いでいる俺とはえらい違いだが。


「リブレはもうちょっと贅沢してもいいと思うけどなー」

「そんなことできる金がないんだよ。こちとら事業拡大したはいいものの、従業員の数も増えてんだぞ」


 それも自分含めて育ちざかり、食べ盛りの年代が多いから食費の割合が必然的に多くなるしな。


「そりゃ楽に生活できるようにはなったが、遊び暮らせるようなものではないんだよなぁ」

「大変だねー」

「そう思うならどいてくれよ」

「いやだー」


 現場の状況をお教えいたしますと、ソファーに座っている俺の膝の上に横からリオンがうつ伏せに乗っている状況。

 つまり、太ももの辺りを変幻自在に形を変える双丘をグニグニと押し付けられている形。

 何がまずいってその位置だよな。

 いち男性としてもはや致し方ないであろう生理現象が察知される恐れがある。

 というか、もう狙ってるだろ。


「お?」という感じで俺の生理現象に気づいたリオンは俺を見上げ、ニッと笑う。

 なんだこいつ可愛すぎか?

 衝動的に抱きしめようとした腕をすんでのところで引き留める。

 それによって泳いだ腕はしょうがなしにリオンの頭の上へといく。


「あまり困らせてくれるなよ……」

「わたしがリブレのことが好きな女の子だってことをちゃんと認識していてもらわないといけないからねー。これは、そのチェックだよー」


 俯きながら目を手で覆う。

 目の前の女の子が尊すぎる……。

 この頃、本人に恋をしているという自覚が出てきたのか、以前よりも積極的になってきていてあしらうのにも一苦労である。

 前までは無意識に俺をユーワクしてきていたのだが、最近はその豊満な体を遺憾なく利用して、隙あらば既成事実づくりをと考えているのである。

 リオンの凄いところはそういったずる賢さと天然の可愛さが両立されているところである。

 ここは本人に自覚があるかどうかはわからない。

 なんなら、天然なので自覚はないのだろう。

 だからこそ、破壊力を増している。


 なでなでなでなで。


「? どうしたのー?」

「(精神統一……。精神統一……)」


 そのリオンの頭を撫でることで精神統一を決め込む。

 我ながらちょっとトんでんな。

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