164日目 紹介

「おかえり! プリンセちゃん!」

「……おじいちゃん」

「はい」

「……あれ、わたしが嫌だってわかってるよね?」

「え、でも……」

「……おじいちゃん、嫌いになるよ?」

「すみませんでしたぁ!」


 背丈が自分の半分もない幼女に土下座する皇帝の図が生まれる。


「いや、まぁ俺にも目的があってだな? そいつの様子を見ておきたかったんだ」

「リブレさんの?」


 否が応にも警戒心が高まりますが。


「いや、レイン嬢。俺にリブレをどうこうするつもりはねぇ。ただ、こっちとしても知り合いが寝たまんまだってのに何も感じないってわけではねぇんだわ。なぁ?」


 ぞろぞろと出てくる5種族の長。

 もちろん、そこにはプリンセの父も含まれるわけで。


「お父さん」

「よく帰った、と言いたいところだが。そういうわけではないようだな」

「……旅行だよ」

「そうか……」


 考え込むプリンセの父。


「というか、リブレさんの様子が見れたんならいいんじゃないですか? 私たちは今日の宿を確保しないといけないんです」

「は? 頼めばいくらでも虎族の長こいつの家でも王宮うちでも泊まれるのにか?」

「今回はそういうしがらみに縛られないのが目的ですから」


 そりゃ歓待を受けられるんでしょうけど。

 気を回すことも多そうですから。


「そうか。誰か」

「はい」

「こいつらに一通り宿を紹介してやれ。ただし、低ランクなのは認めん」

「かしこまりました。では、プリンセ様とお客人方。こちらへどうぞ」


 カイルさんなりの気遣いでしょうか。

 確かに、紹介してくれる分にはありがたいですけど。


「プリンセちゃんの言ってた知ってるかもしれない人っていうのは……?」

「……いいんじゃないかな。別に連絡もしていないし」


 確かに、連絡は取っていませんし、気にしなくてもいいのかもしれません。


「では、こちらになります」


 侍女の方が案内してくれた部屋に入ると、


「む、虎族の」


 ライオン族の姫、アミラがいた。


「……なんで?」

「それはこちらのセリフだ。お前は今ランガルにいるはずでは……」

「旅行にきたんです。アミラさん。お久しぶりです」

「む、レイン殿。リブレ殿もおられるのか。そして……」

「あ、そこの物体は気にしないでください」


 ハンネは未だにグロッキーから回復できていない。

 本人が思っていた以上に、というか他と比べても類を見ないほどに乗り物酔いに弱い質だったようだ。


「それで、要件は?」

「あ、カイルさんから宿を紹介してもらうようにと……」

「皇帝が? ふむ……」


 ゴソゴソと地図をあさりだすアミラ。


「あの、なんでアミラさんなんですか?」

「今、街の整備を任されていてな。現状、私が一番詳しいと判断したのだろう」


 そんな大役に就いていたんですね。


「任されたのはつい2日前だが」


 思ってたより最近でした!

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