104日目 情報
「どうやら、迷惑をかけてしまったようですね……」
「いや、それは今更でしょう。そんなことはどうでもいいです」
何なら、既定路線まであるので本当にどうでもいいですけど。
自分のせいで巻き込まれて死んだ方たちには謝ってもいいかもしれませんね。
「とりあえず、どうやって操られていたかを教えてください」
「……わたしは、これほどまでにあなたに拘るつもりはありませんでした。もちろん、あなたを操っていたわたしに言えた義理ではありませんが。ぐふっ……」
長も、レインの言いたいことはわかっているのだろう。
問題は長のような実力者でも場合によっては操られるという事なのだ。
「そう、ちょうど魔がさしたとでも、言うのでしょうか……。リブレ殿、でしたか? 彼が戦闘不能になっているという事を聞き、今ならあなたを連れ戻せるのではないかと考えていた頃でしょうね。最初に干渉されたのは」
「最初に?」
「えぇ、体感では、何度かにわたって操られていた気がしますね。ぐっ……! 徐々にあなたを連れ戻そうという意識が強くなり、その意識に疑問を抱かなくなったあたりで真の意味で乗っ取られた、というところでしょうか」
かなり役に立つ情報ですね。
つまり、操ろうとする当人にある程度の期間にわたって認識を変えるような干渉をして、それが成功した場合に体を操れるようになるという事でしょう。
逆に言えば、その段階でおかしい、自分で考えを矯正できれば操られるという事はないというわけですね。
何かに迷っているという人ほど操られるリスクは高くなるのでしょう。
「ありがとうございます。役に立ちましたよ」
身内がちょっとおかしいと思ったら疑うべきかもしれませんね。
「お礼と言っては何ですが、残った者たちは見逃してくれるというわけにはいきませんか……」
「安心してください。元々、残そうと思っていた人たち以外はもういませんから」
形式上ついてきてはいたものの、戦意はなく、何もする気がない人たちを殺すつもりはありませんでした。
殺人鬼ではありませんから。
皆さんを止めなかったというのはちょっと釈然としませんが、そこまでは知ったこっちゃありませんからね。
知り合いのお父様方もここにふくまれています。
「そうですか……。本当に、皆さんには、申し訳ないことをしましたね……。勝ち目のない戦いを、何度も何度も……」
「操っていた人の指揮官としての才能のなさもありましたがね」
頑張って罠とか作っていたんですけど、まさか全員で正面から来るとは思っていませんでした。
おかげで罠を使うまでもなく撃退できてしまいました。
「がっ……。ふぅ……。あと、どのくらいでしょうか……」
「3分くらいでは? 最後の言葉くらいは息子に残してもいいと思いますよ」
「父上……」
レインはちょいちょいと手招きして茂みから事の顛末を見ていた長の息子を呼ぶ。
「本当に、悪いことをしました……。年から考えて、あなた以外の人が長になるでしょうが……」
「はい……! 勉強して、もっと強くなって、将来は、長に……!」
涙ながらに決意表明をする息子。
「この方たちを恨むというのも筋違いですが、わかっていますね……?」
「正直、気持ちの整理はつきません……。しかし、今の俺では敵わないというのも事実です……。いずれ、強くなってから、考えたいと思います……」
「そうですか……。それも、いいでしょう……。うっ……! あなたに、神のご加護が……」
長は、ここで息を引き取った。
残り3分というレインの見積もりは極めて正しかったと言える。
「行きますよ、プリンセちゃん」
「……そうだね」
その日、エルフの町に持ち帰られた遺体は、エルフの成人男性の半分にも上ったという。
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