56日目 実験

「……レインちゃん」

「はっ! 気づかぬ間にプリンセちゃんを撫でちゃってました!」

「どう? うちの子は可愛いでしょう!」


なんという暴力的なまでのかわいさ!

親バカになるのもわかりますね!


「でも、ご飯は作りすぎです」

「……うん、ごめんね」


もういいですけどね。


「まぁ、おいしかったしいいじゃないかー」

「ハンネさん!? それなんです!?」


リブレさんに栄養を与えるための注射を打ちに来るはずだったんですけど!?

勝手に顎をあげさせて緑色の液体を流し込んでいます。

いや、もう聞かなくてもわかりますよ。

絶対ヤバいやつですよねぇ!


「大丈夫だって。死にゃしないからさー」

「死なないためのものでなんで死の心配をしなきゃいけないんですか!」


何のために任せてるんですか!


「まぁ、理論上栄養は取れてるし、ギリギリ死なないとは思うからー」

「今でさえギリギリなのに!?」


マジで何が入ってるんです!?


「あらー、聞いていたのよりも破天荒な人みたいねー」


プリンセちゃんのお母様も苦笑するしかありません。

恐らく、王様がハンネさんの概要は説明していたのでしょうが、関わりあうこともないと判断したのでしょうか。

ヤバい部分をそれとなく仄めかすくらいの説明をしたのでしょう。

実際はそんなもんじゃないわけなんですけど。

ランガルで一番非常識な人は誰かと聞かれたらキラさんと並んでトップに位置していると思います。

なんなら一番かもしれませんが、キラさんのぶっ飛んでる時は理解を超えてますからね。

ツッコみようがないほどに。



「じゃあねー。経過報告を楽しみにしてるよ!」

「やっぱりリブレさんで実験してますよねぇ!」


リブレさんにエグイ色の飲み物1瓶飲ませたら満足そうな顔をして帰っていきました。

流石にイカレテますね。


「……ちゃんと見ておかないとね……」

「そうですね……」


心労が増えます。

ハンネさんから目を離したのが間違いでした。

この頃ちゃんと(?)していたので安心してましたね。

これでいきなりリブレさんの容体がおかしくなったら絶対に許しません。


しかし、ハンネさんの凄いところはあれだけヤバそうなことを言っておきながら普通にヤバいものしか作っていないという事なんですよね。

結果的にはヤバいんですけど、大事には至らないというか。

最悪の結果には至らないというか。

まぁ、いつ至ってもおかしくはないという油断できないところではありますが。


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