なんだかんだ実力者

「で、自分の意図するところでない部下の暴走だったから上司自ら謝罪に来たと」

「そういうことになります」


周りをきょろきょろと見回すメガネ領主。


「バンフリオンさんは?」

「今は出てるな」


アンリさんのところだ。


「呼ぶか?」

「いえいえ、そこまでは。謝罪したかっただけですから。予定を曲げさせてまですることではないですよ」



「ちなみにだが、それがお前の指示でないと証明できるか?」

「はい?」

「その説明だけならお前が指示していたが、旗色が悪くなったから部下のせいにしたともとれる。何か、違うと示せるものはあるか?」


俺だってそんなことはないとわかっているが、一つ確認が欲しい。


「ないです」

「そうか」

「そもそも自分のあずかり知らぬところのことなのにそんな証拠があるほうがおかしいです」

「あぁ、それが正解だ。無理言って済まなかったな」


ここでパッと証拠になるものが出てくるならそれこそ仕組まれたものだという事になる。

こいつの領地からここまでくる時間とここを訪れた今日のタイミングから、そんな用意をすることは基本的に不可能なのだ。


だが、これで一応の確認は取れた。


「あんたが指示したから、今まで家に張り付いてた奴らが減ったんだな」

「はい。撤退するように指示しました。本当に不快な真似をして申し訳ありませんでした」

「いや、いいよ。話し合いに応じてくれたのもあんたのとこだけだったし、ある程度温和なのは予想出来てた」


リオンと、ついでに俺を狙う輩は1人じゃない。

各方面に調べのついている限り話し合いの場を儲けませんかと手紙を送ったのだが、応えてくれたのはここだけだったからな。


「まぁ、気を張っていたのは俺だけで、リオンは特に気にも留めてなかったみたいだけどな」

「それはそうでしょう。バンフリオンさんは、かなり格が違いますからね。かなりの上位者が見張りに来ていない限り、気にしないでしょう」


実力があれば、大抵のことは覆せるってわけか。

つくづく、世界って割と単純にできてるよな。


「でも、なんでわざわざ来たんだ? 誠意という考え方もあるが、それこそ領主本人が出てくる案件でもないだろ」

「何を言っているんですか! あなた方との和平以上の案件なんて存在しませんよ!」


おぉ。

かなり強く言われたな。


「孤児院の件も聞きましたが、相手を後手に回らせ、何もさせない戦略は見事でした。詳細はわかりませんが、あなたが立案者ですよね?」

「そうなるな」

「やっぱり。バンフリオンさんらしくはないと思いました。バンフリオンさん単体でもこっちは覚悟しないといけないのに、そこに戦略が加わったら苦しいなんてものじゃないですから」


「さっきからやけにリオンを評価してるが、あんたならやりあえるんじゃないのか?」

「うーん。ご指摘の通り、やりあえるとは思うのですが……」


メガネ領主から俺でもわかるレベルのプレッシャーが放たれる。


「しかし、まぁ部下も合わせて戦えるってレベルですかね。手傷は負わせられますがそこが関の山でしょう」


スッとプレッシャーを引っ込める領主。

いやー、パねぇー。

領主こわー。

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