メイドはもはや神では?

「……ごめんなさい」


移動中はむっつりと黙っていた女の子だが、孤児院が近くなってきてようやく口を開いた。


「なにがだ?」

「あなたを、役立たず呼ばわりしたことよ。見られたことは許してないけど、私がひどいこと言ったのも事実だわ。だから、ごめんなさい」


うん、まぁ、そこはな。

実質何もしてなかったわけだし、いいけど。


「あと、皆さんありがとうございます。私なんかを助けに来ていただいて……。バンフリオン様に至ってはどうお礼を申し上げて良いのやら……」

「うーん、逆だと思うけどねー」

「逆とは?」


リオンが頬に指を当てて考えながら話す。


「私は、助けても当然だと思うんだよー。仮にも、パパの娘だから、そのくらいの義務はあると思うんだー」


ほう。


「でも、リブレと、メイドたちは違うよー? どんな打算があったにしろ、リブレたちはあなたを助ける義務なんてどこにもないんだよー。ただのボランティアだねー」

「た、確かに……」


女の子も感銘を受けている。


「だから、お礼を言うならもちろん、私に言ってもいいんだけどー。リブレたちにしっかり言っておいた方がいいと思うよー」


なるほど。

ボランティアか。

確かに、打算があったとはいえ、今回は俺が動く義理はなかったわけか。

なんかあれだな。

丸くなったな、自分で言うのもなんだけど。

前なら絶対に家に引きこもって無視してた。

この変化がプラスなのかマイナスなのかはわからないが、まぁ1人の女の子の、そして孤児院の皆さんの自由を守れたという事でいいとするか。



「え、えっと、その、ありがとうございました……」

「うん、まぁ、いいって。また今度来るから。その時には邪険に扱わないでくれよ?」

「め、滅相もないです……」


リオンに諭されてから一気にしおらしくなった。

逆にやりにくいというか、お前そんなキャラじゃないだろ感が凄い。


「じゃあ、俺たちは帰るから」

「本当に、ありがとうございました!」


最後に深々と頭を下げて孤児院の中に帰っていった。

中から子供たちの歓声も聞こえる。


「よし! 撤収!」


速やかに立ち去る!



「いやー、楽しかったねー」


リオンがもうつやつやだ。


「やっぱり時々は戦わないと感覚が鈍っちゃうよねー」

「……さいですか」


リオンの戦い方に感覚も何もないと思うのは俺だけでしょうか。


「アン、ドゥ、トロワ、お疲れ様」

「「「もったいないお言葉です」」」


ただ、1つだけ疑問だ。


「なんでお前らそんなに汚れてないんだ?」

「「「メイドですので」」」


俺も多少の返り血と砂。

リオンはほぼ返り血で汚れているのに対し、3人のメイド服はピカピカだ。


「ご主人様の前で汚れている私たちを見せるわけにはいきませんので」


だそうだ。

うん、まぁ、その心意気はともかくとして。

方法論が知りたい。

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