店の裏側

「しかし、流石ですご主人様。止まる場所まで指示され、もちろん信じてはいましたが、あそこまで上手くいくとは……」

「だろ、もっと誉めろ」


なにせ、今回の出店のためにめちゃくちゃ時間を費やして事前調査したからな。

メイドたちがスープ作りを続け、リオンがアンリさんの仕事を学びにいっている間、俺はオーシリアとともに上空から町の様子を観察していたのだ。

魔王が住む町としてはそれほど大きくはないため、調査は比較的楽に進んだ。


まず、ターゲットを決めなくてはだが、これは最初から決まっていた。

子供だ。

ここの時間軸なら子供に見えても大半が俺よりも年上なのだろうが、まぁ基本的な生態は変わらない。

平たく言えば、好奇心旺盛なのだ。


通常のとんこつラーメンだとあまり子供に食べさせたいものではないが、今回はメイドたちの尽力により、豚骨ベースながら野菜が強く、甘い感じのするラーメンとなっている。

カロリーを気にする方たちもにっこりだ。

いや、カロリー気にするならまずラーメンを食べないか。


で、話を戻すと、子供連れの家族が通る場所、時間を把握して初出店はどこにするのかを決めたのだ。

話題性重視だな。

子供は1人さえ落としてしまえば他の子も私も私もとなるから引きずりこみやすい。


「明日は200出せるように頑張ろうか」

「「「はい」」」


既にてきぱきと明日の仕込みを始めているメイドたち。

職人魂だな。


さて、その間に俺は売り上げの計算でもしとくか。

原材料費がこれ、燃料費とかがこれ、売り上げがこれ……。



「ふぅ……」


中々に疲れる。

まぁ、基本的にこんなことをやったことがない奴が本で読んでた知識だけでどうにかするというのは無理があるだろうな。

慣れてないから一つ一つ確認が必要で作業効率悪すぎるしな。

俺が大学で経済学でもやってたら良かったんだろうが、まず大学にも行けなかっただろうし、無い物ねだりか。


となると、この作業を分担してくれる人を探すべきなんだが、恐らくできるであろうメイドたちはラーメンにかかりきりだ。

もちろん、頼めばやってくれるのだろうが、ブラックになってしまう。

それだけはダメだ。


オーシリアは論外。


リオンは頭は悪くないのだが、数字が絡んだりしてくるととんとダメになるからな。

そもそも勉強苦手みたいだし。

1から教えていたのではその間の俺の負担が凄い。

雇うつもりはなかったのだが、雇うしかないのか?


メイドをもう一人貰ってくるというのも視野にいれるか……?


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