お盆の意味

バァン!


俺たちが温泉からあがり、くつろいでいるとアンリさんがふすまを乱暴にぶち開けて帰ってきた。


「あ、パパ。おかえりー」

「お邪魔してまーす」

「「「……」」」


自分の家なのでもちろん自然体のリオン。

自分の家であるかのように寝ころんでくつろいでいる俺。

緊張でがちがちになっている3人という風になっている。


「……どういう状況だ」


疲れ切っている様子のアンリさんがツッコまざるを得ない感じになっている。


「どうもこうも、挨拶回りを終えてきたんだよ」

「そいつらは」

「お、お初にお目にかかります! リブレ様のメイドであります、アンと申します!」

「ドゥです!」

「トロワです!」

「ふーん、お前のか。まぁ、いいんじゃねーのか、そういう趣味も」

「何悟った感じ出してんだよ!」


別に俺の趣味でこんなことになったわけじゃないから!

いや、メイドさんとかに憧れがあったことは否定しないけども!

成り行きだから!


「で、仕事してたのか?」

「あ? あぁ。お前らのせいで仕事が山積みになってんだからな」

「どうせあのゲス野郎のとこの領地の話だろうけど、俺たちのせいではないだろ」


あいつのせいだ。


「とにかく、仕事が増えてんだよ。ただでさえ、この時期は忙しいっていうのによぉ」

「何かあるのか?」

「日本人ならわかるんじゃないのか?」

「日本?」


そんな俺に関係することでアンリさんを忙しくさせるようなことあるか?

戦争が始まってて死者がたくさん出てアンリさんが忙しいってんなら日本人ならわかるって言い方にはならないしな。

他の国からも死者が来てるんだから。

てかその場合、戦っていた人たちがここで顔を突き合わせることになるよな。

それはどうなんだろうか。

お互いにいがみ合ったりするのだろうか。

はたまた、別に戦っていたのは仕方なくだからと、互いに許しあったりするのだろうか。


「となると、お盆か?」

「お、正解だな。俺は日本から度々何かを拝借してるからな。せめてものお返しってところか」


なるほど。

ただ物をパクってくる神様じゃなかったってことか。


「もちろん、死者を蘇らせるとか、向こうのルールに抵触するから出来ないがな。一家の団欒を見守れるくらいの権能を与えてやるようにはしてる」

「それでも十分すぎるほどだろ」


根っからの現代人である俺にはお盆なんてただ流すだけの行事に過ぎなかったが、亡くなったご先祖様たち、それも関係のある人たちが俺たちのにぎやかな様子を見て楽しんでくれるというのならば、もっと真面目にやっておくんだったな。

最後の方は参加すらしてなかったけど。

第六界に戻ったら、レインと一緒に似たようなことをやってみるか。

ご両親が見に来てくれるかもしれないから。


改めて座布団に座りなおしたアンリさんがリオンを見やる。


「よく帰った」

「うん、ただいまー」

「パパの胸に飛び込んでもいいんだぞ?」

「怒るよー?」

「ごめんなさい……」


パパ、弱っ!

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