どう転んでもダメ

告白を受けてから、リオンの俺に対する態度が劇的に変わったかと言えば、そういう話でもない。

なんなら、こっちに2回目にきたすぐの時のような距離感である。


しかし、あの時はリオンは俺のお姉ちゃん分として接していた。

俺もリオンがそういう感情だったので流せていたのだが、今の状況になると話が変わりすぎる。

よくよく考えたら、こんな美人さんに膝枕やら、ハグやらされているのがまずおかしいのだ。

そしてその相手は自分のことが好きだと公言している。

どうすりゃいいんだ、これ。


「なにか難しいこと考えてるー?」

「まぁ、ある意味な」


非常に難しい問題である。


「ほらー、私で癒されちゃっていいよー?」


後ろからぎゅっとして胸を押し付けてくるリオン。

多少もがくが、そもそも力で敵うはずもない。

前も全く同じ理由で諦めていたのだから。


「ほらほら、暴れないのー。こういうの、好きでしょ?」

「大好きですが、何か!?」

「そう言われると私も反応に困っちゃうんだけどねー」


逆に問おう。

胸を押し付けられて嫌な男なぞいるのか!?


「お前らはなんかちょっと大人しくなったな」

「ご主人様、我々はあくまでもメイドですので」

「正妻、第二夫人様の後に寵愛を賜る立場でございます」

「よって、リオン様に無礼を働くことなどできません」


こっちはこっちで謎のプライドを発揮している。

そういう話だったのか。


「とういうか、リオンはもうその立ち位置なのか」

「少なくとも、メイドよりは上であると認識しております」


ふーむ。



その後、3人の領主のもとを訪れ、比較的穏やかにリオンの話は終わった。

あくまで、リオンの話は、である。

というのも、リオンが俺のことをしっかりと紹介するようになったのだ。

リオンを殺して、もしくはリオンの婿になってこの世界を牛耳ろうとしていたやつらにとっては俺なんて邪魔中の邪魔である。

つまり、ヘイトが一気にこちらに向いたのだ。


それに、紹介されるとなっては俺もフードを被りっぱなしというわけにもいかない。

そして肌の色でまた一悶着。

面倒である。


「中々理解はしてもらえないねー」

「そりゃそうだな」


俺と比べれば、自分の方が強いと、ふさわしいと考えるだろうよ。

だが、リオンは俺の強さではない部分を好いてくれている。

戦っている土俵が違うのだ。

そりゃ理解も及ばないだろう。


「で、次はどこに行くんだっけか?」

「好意的なところの2つめだよー。位置的に行きやすいからねー」

「そうか、それならまだましなのかもな」


だが、リオンに好意的な分、婿候補だとか言われる俺に良い感情が向かないことも考えられる。

どちらにせよ、俺には面白くないという感情が向けられるだろう。

はぁ、もう慣れてきたぞ。

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