風向きにはご注意下さい
「自分で言うのもなんだけどー……。あれでよかったのかなー?」
「まぁ、いいだろ。俺も本気でキレてたわけじゃないし」
俺がキレてたのは八つ当たりで罵倒されたことに対してだ。
向こうから人数有利で仕掛けてきておいて負けたら罵倒は虫が良すぎるだろう。
「流石、ご主人様。器が大きいです」
「それはないが、これからが不安だな」
人さらいなんて集団があんな大人数で存在していることが問題すぎる。
さらに言えば、堂々とし過ぎている。
ああいう職業は仕事自体は少数精鋭で行うほうが合理的だ。
人数が多くなればなるほど目立つし、粗が出るから失敗のリスクも大きくなるし。
それを厭わないという事は、リスク自体がないことが考えられる。
つまり、捕まらないのではないか。
となると、ここの領地は司法があまり機能していないの可能性が高い。
ここは今までより気を引き締めてかかる必要がありそうだ。
「よう、バンフリオンか。俺のもとに来る気になったのか?」
「残念ながらそれは永久にないよ」
「そう言うなって。破格の待遇を約束するぜ?」
今回の領主には到着してそのまま会うことが出来た。
口ぶりから察するに、リオンとそう年は変わらない。
だが、この会談にも周りに女性を侍らせている。
彼女らはいずれもあられもない姿をしており、ギリギリ放送禁止コードは守ってるようだが、とてもまともに見れる姿でない。
「そもそも、あまり話したこともないでしょう」
「そんなことは関係ないぜ。お前が俺のものになるべきいい女だからそう言ってるまでだ」
「……」
あまりの物言いに俺も言葉が出ない。
こういう奴本当にいるんだ……。
「お前にしてはなんか後ろにぞろぞろ連れてんな」
「一緒に来てくれたんだよ」
「ほう……。メイドの連中も中々粒ぞろいじゃねーか。どうだ。俺のところで働かねーか?」
ゾッとしたように腕で体を抱く3人。
{嫌悪}しか浮かんでないし。
気になるのは周りの女性の感情だ。
少なくとも、マイナスの感情ではないが、俺に視えない。
敢えて言えば、空白のような状態だ。
しかし、操られているのとも違う。
なんだこれは……?
「そう気を張るなって。悪いようにはしねー。むしろ、かっ飛ぶ程気持ちのいい経験をさせてやるぜ?」
「……?」
額面通りに受けとるなら、セクハラと言っても言い足りないレベルのセクハラになるんだが、引っかかるな。
言葉に含みがありすぎだ。
こういう時、俺の眼は思考ではなく感情を視るものなので核心をつけない。
そんな事態に陥ることそうそうないけど。
高望みしすぎか。
「!!??」
俺は不意に襲ってきた眠気と、気付けば充満していた甘い匂いに口元を押さえる。
「ほう、察しがいいな。たが、遅い」
ニヤニヤしたゲス男がそんなことを言う。
「離脱を……!」
俺より前で匂いを嗅いだであろうリオンからは反応がなく、後ろのメイドたちも座り込んで動けそうにない。
「オーシリア!」
バリィィン!
窓から飛び出し、俺だけでも逃げる。
恐らく命は取られない。
今はこれをどうにか……!
崩れ落ちそうになる体に鞭打ってどうにか離れた家の屋上に辿り着いた俺の意識は、そこで途絶えた。
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