悪いことはすぐに思いつく

「なんか日に日にやつれていってないかな?」

「……気のせいだろう」


3日後の朝。

アンの宣言通り次々にやって来たドゥとトロワに起こされたことによって慢性的な寝不足に陥っている。


鍵をしっかりかけているのになぜか普通に入ってくる度に危機感で飛び起き、ベッドを挟んで議論が始まるのだ。

その際、万が一に備えてステッド・ファストを発動できるようにしておきたいのだが、オーシリアが杖のかたちになれないため、常に持っていることはできない。

更に、オーシリアは一度寝たらなかなか起きないし、寝た状態では魔法を発動してくれない。

よって、杖状態のように俺が持っている必要があるのだが、さっきもいった通り、起きないので寝ているオーシリアを抱えてメイドさんに退去を促すという状況であった。


「ご主人様、本日中には小太刀も完成させることが出来るかと思います」

「中々に早いな」


剣とかってかなり時間がかかるような印象だったけど。


「メイドですから」

「うん、もう、いいや。それで」


万能だな、その言葉。


「鞘とかは?」

「ご主人様にお似合いのものを、見繕わせて頂きます。もちろん、気に入らなければお申し付けください」

「わかった」



「では、本日はどう致しましょう」


ドゥが鍛冶場に去ったのち、トロワが今日の方針を聞いてきた。


「今日は、今後の予定について考えたい。部屋に集まってくれるか」



「さて、これからこっち方面に向かうわけなんだけど」


地図を広げながら俺はある点を指差す。


「この地図のここに違和感があるんだよな」

「どういうことかなー? 地図に不備なんてないと思うけどー」

「この地図はアンリさんの部下が作ったものなんだよな」

「そうだよー」

「じゃあ、この街の場所とかの情報はどこからだ?」

「え?」


「アンリさんのことをよく思ってない奴等からの地図情報とか信用できないだろ」


俺ならある程度本当のことの中に嘘を混ぜる。

自分が秘密裏に保持している戦力とかの駐屯地とかな。


「この盆地なんかは周りを山に囲まれていて周りからは見えない。街と街の中間に位置しているにも関わらず、特に宿場町のようなものもない。ここだけ明らかに空白なんだよ」

「……弟君って凄いねー」


リオンは感心したように頷き、アンとトロワからは尊敬の目を向けられる。

うん、まぁ、全部推測だし。

こんなもんどれだけ性格が悪いか選手権みたいなとこあるけども。


「そんなわけだから、ここの領地を出て次のところに入ったらちょっと注意が必要になると思う。もちろん、領主にそういう意図があるだけで一般の人たちはなんの関係もない可能性も高いから、過剰に意識しすぎるのもどうかと思うけどな。一応、頭に入れておいてくれ」


ちゃんと対面できれば判断ができるのだが、奇襲を掛けられたりしたらなんの意味もない。

よい感情を持っていないとわかっているところに飛び込むんだから、警戒しすぎということもないだろうけどな。


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