食事はやっぱりみんなでね

「では、本日の夕食はこちらで取られるのが良いかと思います」

「任せるよ」


コテージで俺とリオンがフカフカの布団でゴロゴロしている間、トロワが街を色々探りまわって計画を立ててくれたらしい。

うん、メイドさん神。


「えっと、任せるとは言ったけど、俺はもっと庶民的なところがいいんだけど」

「そうは言いましてもご主人様。ご主人様の身の安全を預かる以上、こちらとしては格式の高いお店の方が都合が良いのです」

「最悪、リオンがどうにかしてくれるだろ?」

「任せてよー」


リオンは軽ーく承諾してくれるが。


「ご主人様。それではバンフリオン様のひもから脱却できませんよ?」

「はっ!」


アンからの衝撃の一言で我に返る。

もしかして今、俺リオンのひもになってる?

リオンの顔色を伺うと、笑顔がピシッと固まっている。

こいつ意図的にやってやがったな!?


危ないところだった。


「アン。俺を正気に戻してくれてありがとう」

「いえいえ。ご主人様の全ての面倒を見るのが私たちの役目ですから」


うやうやしく一礼するアン。

やり手が過ぎる。


「お前たちは食べないのか?」

「私たちはあとで順番にいただきますが、ご主人様と同じタイミングで食事をとるなど言語道断です」

「どうしてもか?」

「どうしても、です」

「さいですか……」


まぁ、無理にとは言わないけどさ……。

ん?


「なぁ、俺が3人の主人になるんだよな?」

「「「その通りです」」」

「なら、命令だ。一緒に食事をとってくれ」

「「「はい?」」」

「食事は皆で取るもんなんだよ。理想ではな」


日本にいたころはそんなこと考えもしなかったが。

やはりみんなで食べたほうが料理はより一層美味しくなるのだ。


「それがご命令とあらば……」


渋々といった感じで席につく3人。


その日の夕食は3人のことを知る良い機会となった。

3人とも領主家ほどではないが、いいところの育ちらしい。

それがなにをどう間違ってメイドさんになっているのかは教えてくれなかったが、とにかく自分が使えるにふさわしい相手を探していたとのこと。

あんなところを訪れる人などまずいないので、日々将来仕えるご主人様のために自らのスキルを磨く日々で、俺が来た。


最初は特に気にも留めておらず、リオンのおまけとして認識していたらしいが、指導を受けるにつれ、その印象も変わっていったらしい。

というのを本人たちから聞いた。

正直前半部分は言わなくても良かったのではないかと思う。


まぁ、端的に言えば俺が武器も持たずに皆をあしらう姿に感動したらしい。

その際、オーシリアが背中にプラプラとぶら下がっていたりしたのは目に入っていなかったようだが、それでいいのか。


「うん、で、この状況は?」

「いえ、メイドの仕事にはもちろんご主人様の夜のお相手も含まれておりますので」

「もちろんなんだ……」


ネグリジェ姿で俺の部屋に突撃してきたアンと俺が跳び起きたベッドを挟んでじりじりと話を続ける。

ちなみにリオンはメイド3人に諭されて別部屋となっている。


「ご安心ください。ご主人様が飽きることのないように3人で順番に参りますので。時には複数人で、というのもいかがでしょう」

「売り込みすな! とりあえず今日は自分の部屋に戻れ! な?」


どうにかアンを部屋から追い出し、警戒しながらベッドに潜る。

これが毎日続くのか……?

俺の理性が試される……。

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