観覧車だけは無理

「え、でもさ、雪ってずっと雪なわけじゃないよな? いずれ固まって氷になるし」

「そうだねー。だからパパは定期的に持ってきてた気がするよー」

「なぁ、閻魔大王って忙しいんだよな? 暇ではないんだよな?」


非常に怪しい。

おかしいだろ。

定期的に他の世界に雪を取りに行くって。

どういうことだよ。

で、なんで地球の方の神もそれを許容してるんだよ。

好き勝手されすぎだろ。


「もう寒いぞ」


なにせ着物。

それほど防寒性に優れているわけでもなく、むしろ悪いよりだ。

24度でこそ適度だったが、少し山を登りだした瞬間肌寒さを感じ出す。

これ無理やん。


「そうかなー?」

「わしはどうもないがの」

「オーシリアはともかく、なんでリオンは大丈夫なんだよ」


オーシリアは杖だ。

寒さとか関係ないのもまぁそりゃそうなんだが。

リオンは一応人間ではないのか。

もっと言えば生物。

なんで環境変化を超越してるんだよ。

しかも一番薄着だろ。



「いや、ちょっと待ってくれ」


そこから少しまた歩き、俺は悟った。

いや、わかってたんだけども。

これ、歩いて登るのとか不可能すぎる。


「うむ、それはわしも思っておった。まともな人間ではこんな環境どうしようもないのではないか?」

「それは大丈夫だよー。確か、この辺りから上につながる乗り物があるんだよー」

「そういうのを先に言ってくれないかな!?」


まじで環境の下で死ぬかと思った。

割と絶望してた。

普通に考えて10000メートルの登山とかどういう地獄?

ここ地獄なのは間違いないんだけども。


「ここの領主様の家は頂上の方にあるんだけどー。流石に訪問できる人がいなさすぎて、対策を講じたらしいんだよー」

「そりゃ来れる奴なんていないだろうよ」


なんで10000メートル級の山にほいほい登っていける奴がいるんだ。

そもそも、なんでここの領主も頂上に立てようと思ったんだよ。

偉い人の屋敷とかは高いところに立ちがちだけども。

実用性を考えたらどう考えてもそこではないだろ。


「あ、これだねー」


リオンが見つけた横穴を進んでいくと、山の中を進むロープウェイが現れる。

え、すご。

街並みとかは近代のヨーロッパっぽいのになぜここだけ現代の技術を上回っているレベルのが出てくるんだよ。

こんな規模のロープウェイなんざないしな。


「で、なんで弟君はそんなにプルプルしてるのかなー?」

「う、うるさいな。怖いんだよ」

「空中を飛び回るのは平気なくせに何を言っておるのじゃ」


俺は昔から観覧車やらロープウェイやらが苦手なのだ。

ジェットコースターとか、いまや空中歩行すら大丈夫なことが判明しているのだが、どうしても宙ぶらりんの状態が無理なようだ。


誰かこの現象に名前を付けてください。

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