山の高度はほどほどで
「んーとね、お姉ちゃん的にはここから行くのが良いと思うよ」
「その心は?」
「ここの領主は私に対して好意的なんだよー」
なるほど。
初手は穏便にいきたいし、願ってもない話だ。
「ちなみに、好意的と否定的で何対何くらいだ?」
「えーとね、2対8くらいかなー」
「……どっちが2?」
「好意的な方だよー」
前途多難かよ。
「で、ここはどんな場所なんだ?」
「えっとね、この世界で唯一、雪が積もってるところだよー」
「ほう」
俺はアンリさんから
どうやら第七界は平面の2重構造で、俺たちはその上層にいるらしい。
上層の端っこからは落ちれるようになっていて、下層は想像する感じの地獄だ。
下層の端は不可視の壁になっており、逃げだせないようになっているらしい。
上層との通路もアンリさんの家の近くにしかないようだ。
そんなものどこにあったのだろうか。
「ってことはあれか」
「あれだねー」
俺はこの町からでも見える天高くそびえる山を見上げる。
上層はそれほど広いわけでもないのだが、平坦な地形の中で山は1つしかないのですごく目を引く。
というのもあれだ。
尋常じゃなく高いのだ。
普通、ある程度距離が開いている山というのは真横から見ているような形なのであまり高くないように感じる。
しかし、それは地球や第六界のように地面が球状であればの話だ。
ここは平面なので高い山はどこからでも見える。
ここでは、いわゆる天気というものはなく、上空の遥か彼方にどす黒い赤い光があるだけなので雲により見えなくなるという事もない。
「じゃあ、こっち向きだったのか」
今まで真反対の向きで地図見てたわ。
あれだな。
北半球の人と南半球の人で世界地図が逆なやつ。
……。
違うか。
「……本当にあそこじゃないとダメか?」
「結局行くんだから、変わんないよー」
歩きながらうだうだと文句を言う俺。
なぜなら、山を登りたくない。
いや、だってさ、そこら辺の頂上に寺がありますみたいな山ならいいんだが、あの山絶対高度おかしいんだよな!
だって雪の積もってる部分の割合がおかしいんだもん!
なんで俺たちがいる高さは体感24度くらいなのにあんな場所から雪積もってんの?
えーと、確か100メートル登るごとに0.6度下がって、それがあの辺りで割合がこれくらいだから……。
ん?
俺の計算間違ったかな?
あの山10000メートル超えてね?
「ちなみに、この世界天気とかないんだよな?」
「? そうだよー、その言葉も弟君に聞いて初めて知ったしー」
「じゃあ、あの雪はどこから来てるんだ?」
リオンも雪が降っているとは言っていない。
積もっていると言っただけだ。
つまり。
「パパが持ってきたって言って気がするなー」
「地球で雪がなくなってるのはあいつのせいかもしれないな!?」
地球温暖化の衝撃の事実がここに判明したかもしれない。
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