遺伝ってすごい

「いくぞ」


流石は各族長たち。

1つ1つの攻撃の桁が違う。

一般の兵たちは斬りつけて精々傷を残す程度だったのに対し、彼らの攻撃はその周辺部位を吹き飛ばす。

腕を斬りつければ腕が、頭を殴れば頭が飛んでいく。

非常にショッキングな映像となっている。


マレイユさんの隕石のようにすべて消し飛ぶなら何でもないのだが、今回のように原型を残したまま一部だけちぎれていくのは俺から見てもヤバい。

例えば、映像の中でそういう描写があってもえらいことなのに、それが目の前で行われているのだ。

血などが飛ばないのでそこは救われているのだが。


「何というか、その……。戦争でしっかり戦わなくて良かったですね……」

「そうだな……」


ほんと、はったりだけでどうにか出来て良かったなぁ……。

全面戦争になったらマジでヤバかったかもしれん。

そもそもこんなに仲良く出来てなかっただろうしな。


更にこのクラスになるとMPの保有量も多い。

吸収されていてもかなりの時間戦い続けることが出来る。

よって、俺たちはただ見ているだけになる。


「手出しも出来ませんしね」

「そうだな」


レインが魔法を撃っても高速で動いている族長たちに当たる可能性の方が高い。

ここは静観が最善策だろう。


「いずれはプリンセたちもあんな感じになるのかな……」

「ちょっと想像したくないです」


次世代、つまりプリンセやアミラの代はたまたま女の子しか生まれなかったそうだ。

だが、現世代は男性が長となっている。

そして、力こそ全て的な考え方の下、筋骨隆々のナイスガイである。

彼らは獣モードになるよりその鍛えられた肉体で戦った方がいいと判断したらしく、人型のまま戦っている。


まぁ、何が言いたいかというと、プリンセやアミラが将来筋肉だるまのマッチョウーメンになってこうして戦っているのかと思うと、悲しくなるという話だ。

プリンセが国宝級、いや世界遺産級に可愛いのは言わずもがなだが、アミラも相当な美人だし、他の種族の姫たちも見目麗しい。

お父さん方がゴリゴリの軍人顔ばかりであることを考えればさぞかしお母さんの遺伝子が素晴らしかったのだろう。

遺伝子に感謝。



「! 全員退けぇ!」

「!!??」


俺の叫びに族長たちは即座に反応し、俺とレインがいる場所まで飛び退いてくる。


次の瞬間、幻想級ファンタズマルから黒い煙のようなものが立ち上る。


「レイン!」

「はい!」


即座にレインが全属性の矢を作って放つ。


「どうやらこれがカイルさんの言ってたもう1段階上ってやつか」

「リブレさん、光魔法と闇魔法だけです」


土魔法の代わりに闇魔法が効くようになったのか。


「銃部隊!」


待機させていた銃部隊を稼働させる。

あの黒い煙みたいなやつは何なのか。



「リブレさん、まずいですよ」

「だな」


銃弾が通らなくなっている。

通らないというよりは、黒い煙に降れた銃弾が吸収されてしまうという表現が正しい。

あれに触れたらヤバそうだな。


「魔法も試してみます?」

「そうだな」


さっきのはレインが煙に当たらないようにコントロールしてたから幻想級本体にいっていたが、煙に触れたらどうなるのか。

というか、よくそんなコントロールできたな。

流石だ。

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