セコンドアウト

「現状はどうじゃ?」

「被害は軽微。銃の数は減ってきているけどハンネが頑張ってるいますから。かなりもつとは思われます」

「カイルさんが言うには大体3割程度は削れているらしいな」


周りで聞いている皆から「おぉ」という声が聞こえる。


今は円卓に並ぶような人たちが話し合っているのを皆も聞いているっていう状況だ。

基本的には王様を中心として行われている。


「3割かの。開戦から2時間あまりか。夜明け前に決着をつけられそうではあるようじゃな」

「あぁ。リブレには言ったが、あいつはもう一段階力を残しているぞ」


皆から「おぉ……」という声が聞こえる。

上がり下がりが凄い。


「ものは試しなんだが、リブレ。次は獣人族俺たちを攻撃のメインに据えてくれないか?」

「なんで?」


カイルさんが提案してくる。


「俺たちはその性質上、MPを消費することはまずない。族長クラスになれば別だが、基本的には身体能力のみで戦っている。動きも素早いものが多いし、役に立てるはずだ」

「なるほどな」


確かにキラを除いて単純な速さで獣人族に勝てるものはいないだろう。

MPを削られるのがネックにならないというのも魅力的だ。


だが。


「カイルさんもわかってるよな? 吸収されたMPがどういう使われ方をするのかわからないんだぞ?」

「あぁ、だが、こいつらを遊ばせているよりは試す価値はあると思うのだが」


ろくに戦闘に関われず、フラストレーションが溜まっているらしい獣人族の方々が力強く頷く。


うーん。


「レイン、どう思う?」

「良いんじゃないでしょうか。仮に吸収されたMPが回復に使われるとして、それを上回るダメージを与えていただければ良いんですから」


おー。

めちゃめちゃ煽るねー。


ただ、獣人族は負けん気が強い種族だ。

これでやる気が出たようだ。


「了解。次はそれでいってみよう。でも、こっちがダメだと判断したらすぐに引いてもらうぞ?」

「当たり前だな。力ずくでも構わん」


とりあえず方針が決まるのはありがたい。


「マレイユさんとルーリア。いけそうか?」

「わたしは大丈夫ですよ」

「わたくしもいけますわ」

「よし、開幕はまたぶっぱなしてくれ」


流石のマレイユさんとルーリアでもあの規模の魔法を連発することは出来ない。

だから封印していたのだが、回復したらしいのでもっかいやっといてもらおう。

あれでクレーターができるからそれをノロノロと登ってくる幻想級ファンタズマルを狙い打ち出来るしな。


「じゃが、このままでは先程までと代わり映えせんのではないか?」

「王様、たぶん今回はあんまり変えないのが正解だと思うぞ」


人を相手にしている戦いなら裏をかくことが必須だ。

よって戦略を変え続けていく必要がある。

だが、今回はエネミーを相手にした戦いであり、対策をとられることはまずないと考えて良い。

なら、確実に効果があるものを続けるのが良いに決まっている。

そのための序盤の試行錯誤だったのだから。



「幻想級、残り山1つまで近づいて参りました!」


会議を終え、束の間の休憩も1時間かそこらで終わりを迎える。

さぁ、第2ラウンドといこうか。

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