もはや一級建築士

レインと仲直りしてからというもの、レインはもちろん、プリンセも大抵は一緒についてきてくれていた。


「ふむー……」


さっきからUNOとにらめっこしているオーシリアはともかく、2人とも近くにいないというのはかなり久しぶりなのではないだろうか。


「こうじゃな!」


バン!


勢いよくカードを出して手札を床に置き、もう1組の手札を手に取るオーシリア。

器用なことしてんな。


「そうくるかの……」


なんでそれで楽しめるんだ。

手札を変える度に記憶がリセットされてるのか。



「主、主」

「今集中してるんだから……」

「し、しかし、わしもそれをしたいのじゃ」


暇すぎた俺は前に作っていたトランプと合わせてタワーを作っていた。

現在七段。

中々の完成度である。


特筆したいのが、俺が使っているカードは手作りだということだ。

均一な大きさではないし、形もバラバラだ。

作るときには最大限配慮したつもりだったが、こうして少しのズレでも影響してしまうようなことをしていると、まぁまぁおかしくなってしまっているのがわかるな。


「のう、主ー」

「わかった。わかったから。じゃあ、これくらいあげるから、まずは三段くらいからやってみろ」

「うむ!」


テコテコ、トス。


ちゃんと少し遠くに離れてトランプタワー作成に挑むオーシリア。

俺は昔からけっこうやってたからこのエセカードでもなんとかなるが、初見でこのカードでというのはかなりキツイものがあるだろうな。



「できんのじゃが!」

「だろうな」


オーシリアがカードをぺいっと投げる。

俺が九段までいった頃、オーシリアが諦めた。

やっぱり二段すら難しいんだな。

せめてしっかりとしたカードなら出来てたのかもしれないけど、これでは難しいか……。


「ちょっと一緒にやってみるか?」

「……うむ」


拗ねぎみだが、諦めたくはないようだったので2人でやってみることにする。

俺が後ろから補助する感じだが、繊細なコントロールが必要なことをこんな感じで出来るのか?



割と出来た。

三段だけど。

カードを持つオーシリアの手を手首の辺りを掴んで操作し、何十回か失敗しながらなんとか完成までこぎつけた。

気の長い戦いだったが、暇だったし、1回目から二段までは出来ることがわかったので粘れた。


だが、トランプタワーの崩れたときの絶望感は本当にヤバい。

もう絶対ここまで出来ないと思う。

ただ、もうちょっとだけやってみようと思わされる面もある。

もう出来ないと思う自分と次はいけると思う自分が同居してしまうのだ。

で、戦ってどうなるかが決まる。

今回は暇だったので頑張ろうの俺が勝ったわけだな。


ギャンブルも似たようなものなのだろうか。

このくらいでやめとこうという自分と次は勝てるという自分が戦って大抵後者が勝つという。

もしくはそもそもそんな戦いは起きずに次は勝てるとしか思ってないのだろうか。


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