防御は大事だよ
「じゃあ、次は俺たちだな」
喋る人がカイルさんに代わる。
「俺は後方で少し先を視るのに徹する。ヤバそうなのがあったらエルランド王に知らせる。撤退意識は高めで頼む」
「各族長はそれぞれの種族を責任もって統制しろ。誰1人として死なせることは許さん。子供連中はプリンセちゃんのように如何に実力があっても前線に出すな。アミラなど、次期族長も後方だ。万が一、お前らに何かあった時に指揮系統が混乱しないように生きていてもらわんといかん」
こっちの王様もエグイ。
やっぱ伊達に人の上に立ってるわけじゃないんだなぁ。
膝の上のプリンセは不満気だが。
「……なんでダメなの」
「言っただろ? プリンセちゃん。俺たちに何かあった時の保険だ。次の世代が生きてないと、俺たちが満足に戦えないだろ?」
「……むー」
ここは大人側に理があるからなぁ。
俺とかレインも子供なんだけど。
子供にとってそんなのは関係ないからな。
理屈はわかってても嫌なもんは嫌なのだ。
「お父さんの言うことを少しくらい聞いて大人しくしていなさい」
「……いやだ」
ガーンという顔になるお父さん。
怖い顔の人がやるとなんか違うな。
鬼気迫る感じだ。
「プリンセ、頼むよ。俺たちが帰った時に晩御飯を作る人がいないと困るんだ」
「……ん、わかった」
あ、そんな理由で!?
「……確かに、ご飯は大事だもんね」
そこで前を向いて俺の膝にのっていたプリンセがくるりとこちらを向く。
ギュッ。
抱き着いてきた。
うん?
「……美味しいご飯作るから、ちゃんと帰ってきてね」
「あぁ、任せろ」
こんなの言われたら死んでも帰ってくるしかないだろ。
いや、その場合は死体だからご飯なんか食べれないんだけども。
「貴様ー……」
本当に日毎どころか毎秒俺への印象が悪くなっていってるな。
これ以上下がる余地があるのかは知らんけど。
少なくともほぼ最低と言って差し支えないだろう。
「話を進めても良いかの?」
「あぁ、じゃんじゃん進めてくれ」
「では、皆そのような役割分担で異論はないかの?」
全員が頷く。
「よし、では解散。各自通常の業務に戻ってくれ」
「よーし、じゃあ、気合い入れて訓練するとしますかー」
「「はい!!」」
皆の士気が高い。
当たり前か。
具体的な日時が決まると士気って上がるもんだよな。
まぁ、命懸けだし。
直前までに少しでもレベルアップしようと思うのは普通だろう。
「だが、訓練はいつも通りのことをするぞ。いつも通りをちゃんと出来ることが大切だからな」
基本的に何でも「本番」は硬くなったりしていつも通りができないことが多いからな。
しょうがないと言えばしょうがないんだけど、そういうのをちょっとでも減らせれば生き残る確率は非常に上がる。
少なくとも咄嗟に防御が出るくらいにはしておいた方がいいと俺は思う。
ステッド・ファストを出す速さだけは俺は自信あるからな。
そっちにしか特化してないけど。
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