帝王学って何ですか

「ここで重大な発表があります」

「なんでしょうか」

「決戦の日は予定日の1週間前になる」

「聞いてませんよ!?」

「今言ったもんな」


ちなみにこのやり取りは訓練を受けている者、上のクラスも下のクラスもいる中で行われている。

全体に共有しなければならない情報だ。


「なるほど、それでわしもたまには見に来たらどうかなどと言われてここに来させられたわけかの」

「王様にも言っとかないといけないだろ?」

「普通、わしに先に言うもんじゃと思うのじゃが」

「同感だな」

「こうした方が秘密がないことが証明しやすいし、わかりやすいだろ?」

「本音はなんですか?」

「同じことを2回言うのは面倒」


王様、カイルさん、そして現場の皆に同時に説明した方が楽に決まっている。

レインが振ってくれたおかげで本音も言うことになったけど。

そこは愛嬌ってことで。


「愛嬌って呼べるものでもないでしょう」

「いいんだよ、そこは」

「して、理由を聞かせてもらってもよいかの?」

「もちろん。最大の理由は、ここまで来させる理由がないからだ。だって、そうだろ? この日にここら辺にいるっていうのがわかってるんだから。わざわざ城下まで来させて被害を拡大させる理由が無い」

「道理じゃな。では、最大でない理由は?」

「さっきのと被るけど、城下町に被害が大きすぎるんだよ!」


考えても見ろ!


「ルーリアの魔法ぶっぱとか地形変えるレベルなんだろ!? よし、国を守るために迎え撃つぞ! とか言って開幕から吹き飛ばすことになるわ! しかも今回はマレイユさんも出るかもなんだぞ!?」

「あ、それは……」

「国家機密、だろ?」


知るかそんなん。


「今回はマレイユさんがメイン火力まであるんだぞ! 秘匿なんかしてられるか!」

「わしに言えと言っておろうが!」

「どうせ渋るだろうが!」


俺と王様の見にくい争いが行われる。

100俺が悪いけど。


「お后様も戦場に出られるので……?」

「何か?」

「いえ、その、そう言ったことは聞いたことがありませんでしたので……」

「今、初めて申しましたからね」


あ、それ俺のパクりだ。


「とは言え、わたくしが実戦を初経験というのは事実です。みなさんに迷惑をかけることもあるでしょう」


マレイユさんが皆を見回す。


「しかし、わたくしは戦場にこの国の后としてだけではなく、この国を守りたい皆さんの戦友の1人として立たせていただきたいと思っています。どうか、よろしくお願いします」


国のナンバー2であるマレイユさんが一般の兵や冒険者に対して深々と頭を下げる。

王は頭を下げるべきではないとか、目下のものに敬意を表すべきではないとかよく言うが、一般人から言わせてもらえばそりゃ気は遣ってくれた方がいいに決まってる。

相手の方が偉いのは百も承知だが、それでも軽んじられるのは癪に障るからな。


「リブレさんああいうことですよ」

「何がだ?」


「どんな人にも思いやりを持って接しろということです」

「俺そんなに思いやりない!?」

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