リラックスしていきましょう

「リブレさーん、起きて下さーい」

「俺はな。名案を思い付いたんだ、レイン。俺にはMP回復のために寝なきゃならんという大義名分があるのだよ。よって、俺はもう少し寝る」

「オーシリアさん、リブレさんのMPはどんな感じですか?」

「む? とうの昔に満タンになっておるぞ?」

「なんでこんな時だけ先に起きてるんだよ!」


いつも起きろっつっても起きないくせに!


「というわけで、残念ながらもう寝てるわけにはいきませんね」

「あぁー……」


レインにベッドから引きずり降ろされる。


「でも、僕に、リブレさんを、運ぶのは、無理です……」


そもそもレインは筋力はあまりないしな。

敏捷性は高いが、それも体の使い方が上手いということで、筋力によるものではない。


「プリンセちゃん、お願い、出来ます?」

「……ん、わかった」


プリンセが俺をヒョイとお姫様抱っこする。

やだ、イケメン。

いや、サイズ感的に非常に無理があるのだけれども。

あれか。

お姫様抱っこって相手の顔が近くにくるから「ただしイケメンに限る」ってやつなんだな。

格好良くない奴の顔が近くにこられても願い下げだからな。

いや、プリンセは可愛いのにイケメンって思ったってことはやっぱりこの抱き方に何らかの効果があるのか?


試しに、俺がやっている姿とキラがやっている姿を想像する。

うん、俺はシンプルにきつい。

キラは、まぁ、お察し。

どうあっても絵になってしまう。


「今日、何か起こるんでしょう? テントを見張っていたほうがいいんじゃないですか?」

「なるほど、一理あるな」

「お弁当も作ったので、早速行きましょう」

「随分と気合入ってるな」

「まぁ、僕はあいつは嫌いですけど、他の人は特に嫌いってわけじゃないですから。僕と同年代ってことは昔遊んだ仲でしょうし。無視はできないですよ」


文脈的に、「あいつ」ってのは長の息子かな。

シンプルにあいつのことは嫌ってたからな。

レインのことを好きな少年のことは別に苦手ってだけで、嫌ってはない感じだしな。

うん、まぁ、苦手って言ってもかなり苦手な部類だったけどな。



「広場にあるテントを見下ろせるようにするとなると、ここらへんか」


広場周りの家の3階を拝借し、とりあえず朝ごはんのサンドイッチを食べる。

こういうときはアンパンと牛乳っていうのがセオリーな気がするけど。

これ張り込みって言うのかな?


「……美味しいねー」

「そうじゃな、流石レインと言ったところかの」

「そうですか? 良かったです」


ここ一帯がほのぼのしてるから非常に緊張感がない。

ここからなら今日は商談の準備で騒がしいテントの辺りには聞こえないだろうから、普通に話す分には問題ないだろうけど。

俺が言うのもなんだが、ほんとーにのんびりしてる。


「……ずっと気を張ってても、もたないよ?」

「適度にリラックスしていきましょう」

「そうじゃぞ、主。大切なのはメリハリじゃ」

「うん、そうなんだけど……」


俺が言われる?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る