商人の真意
「やぁやぁ、キラさん! 出迎えご苦労さんですな! 我ら商隊、ただいま到着しました!」
商人たちのリーダーは想像の何倍もハイテンションだった。
「お疲れ様です。今日はこのまま城へいくのかな?」
「今日は俺だけ行ってこよう! 商品の品質チェックをしなきゃならん! 商談は明日! 明後日は休息! 今日は挨拶だけさせてもらおうか!」
「わかったよ」
「ちょっとだけ質問いいか?」
「ん! あんたは……リブレさんやな! そんでそっちはレイン嬢とプリンセ嬢! なんかな?」
「今回はどんなものを持ってきたんだ?」
「そりゃ色々だ! そろそろ足りなくなるだろう食料はもちろん! 石鹸やらの消耗品! ついでに酒とかの嗜好品も揃えた品揃え!」
「お、おぅ……」
ずっとそのテンションなのか。
「もう一個だけ。ここにはなんの目的で?」
「……そりゃ売るために決まってるやんか!」
なんだ、今の間は。
ちゃんと売りに来たっていうのは嘘ではないみたいだけど。
問題は、《動揺》の方向がレインだったことだな。
何を考えているんだ?
これ以上は余計に警戒されてしまうかもしれない。
そもそも、万が一にも何かあったらいけないと思ってやった鎌をかけたのが成功するのがおかしいんだ。
しかし、レインに対する態度は友好的だ。
レインに直接何かがあるってことではないと思うんだけど……。
「じゃあ、行こうか? リブレ君はどうする?」
「俺たちはこのままちょっと見回ってから帰るよ」
「わかったよ。また明日」
キラがリーダーを連れて城へと向かったあと、俺たちは商人たちが広げたテントを回る。
「なぜテントなんでしょうね? それぞれ家があるでしょうに」
「……外、寝づらい」
「家の場所がバラバラだからだろ。まとまってた方が何かと便利だしな。長い人は2ヶ月住んでない訳だから、すぐには住めないだろ」
1日2日のために大掃除するのも面倒だろうしな。
「さぁて……」
積み荷のなかに不穏なものが見えるなぁ。
「レイン、囮捜査についてどう思う?」
「どういうことです?」
「絶対ヤバイことが起こるのはわかるんだけど、ちょっと未然に防ぐとなると難しいんだよな」
「なんで僕に聞いたんですか?」
「……多分、狙われるのはエルフだ」
「……なるほど。レインは心配ないだろうが、多分狙われるのは同じ年くらいの女の子だな。目的は……」
「あ、大丈夫です。察しはつきますので」
「そうか」
ま、端的に言えば、慰みものだな。
エルフは基本的に美形だし。
積み荷のなかに何があったか。
手錠だ。
それも小さめの。
レインに向けていた感情からそのくらいは推測できる。
誘拐する気なのだろうが、未然に防ぐのは難しいだろう。
まぁ、とりあえず王様に言ってみるか。
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