天国と地獄
待ちに待った、というかオーシリアが待ちに待った夕食を終え、お風呂タイムになる。
ちなみにお吸い物は久しぶりの魚とあってめちゃくちゃ美味しかったのだが、お風呂のことが気になりすぎてその情報にそれほどの重要性はない。
ちなみにオーシリアだが、お風呂は入らない。
というより入る必要がない。
いや、そんなことを言えば食べる必要も寝る必要もないのだが。
「わしは杖じゃから、汗もかかんしの。風呂なぞに入っても楽しくないのじゃ」
「いや、でも汚れは付くだろ?」
「なら、主が拭いてくれ」
そんな感じで杖の形に戻ったオーシリアを俺が濡れタオルで拭くことになっている。
それも3日に1回という程度だが。
「こういう水着は初めてかな」
思えば今まで水着は体育の授業か小学校の夏休みに開放されているプールでしか着たことがなかった気がする。
親にプールに連れて行ってもらうことなど考えられなかったし、中学校ではもう引きこもりの予兆が現れていた。
高校はもはや外に出ていない。
なんで受験はしたんだろうか。
そんな過去のことを思い出しながら俺はいそいそと着替える。
過去に何があろうと関係ないのだよ!
俺は今から!
美少女2人と水着でお風呂に入れるのだから!
当時イキってた奴ら、ざまぁみやがれ!
「リブレさん、入らないんですか?」
「今いく」
着替えはなぜかレインたちがお風呂場に入った後に回された。
あいつらはもう着替えてるのに。
謎だ。
「失礼しまーす」
引き戸を開けて入った先はまさに天国だった。
小さな銭湯くらい広い湯船に張られたちょうどいい温度のお湯。
それと同じくらい広い洗い場。
そして何よりその洗い場で互いに背中を流しあっている2人!
今はレインがプリンセを洗う番らしく、プリンセの頭を洗ってあげている。
背中側からの光景だが、微笑ましいことこの上ない。
しかし、先ほどまじまじと見るのを禁じられてしまったので、かかり湯だけ浴びてとりあえず湯船に浸かる。
「あぁー……」
日本人としては布団の次にここが落ち着くかもしれない。
ただ、布団が1番だというのは譲れない。
ベッドではなく布団だ。
「わっ! ちょっとプリンセちゃん! 急に頭を振らないでっていつも言ってるじゃないですか!」
「……でも、気持ち悪い……」
「水気はきってあげますから。ほら」
後ろ見たいぃーー!!
本能的に振り返りそうになる首を理性で必死に抑える。
あの美少女2人が水着でわちゃわちゃしてるところを見たくない男がいようか!
いや、いるはずがない!
思わず反語表現で断言してしまいながら必死に理性を保つ。
「……これ、邪魔」
「あ、水着脱いじゃダメですって! そういう約束でしょ?」
「……でもー……」
うぐあぁぁぁーーー!!!
「……レインちゃんも、脱げば解決」
「なにがですか!? 脱がそうとしないでください!」
うおぉぉぉぉーーー!!!
プリンセが大人しく水着を着直すまで俺は延々と生き地獄を味わうのであった。
さっきは天国だと思ったのに。
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