影の薄さも長所です

レインの魔法の派手さに気を取られて俺の存在なんかだーれも覚えてない。

対戦相手の長殿ですら忘れてるんじゃないか?

別に悲しくなんかありませんが?

予定通りですし?


ちなみにさっきからちょいちょいカイルさんを見上げているのだが、彼とは目が合うので見えてるっぽい。

なんであの人も見えるんだ。

まぁ、そんなことはさておき。


俺がなぜ隠れてるか。もちろん、奇襲のためだ。

このままレインのごり押しでも勝てるんだろうけど。

一応は俺と長殿がこの決闘のメインなわけだし。

俺が何もしないでっていうのはちょっとな。


「お」


長殿が水を纏う。

ライオンってネコ科だよな。

水って苦手じゃないんだろうか。

いや、プリンセも虎だけど平気そうだったか。



ドンッ!!

大きな足音と共に長殿はレインとオーシリアの方へ向かう。

もう多少の傷はいいから一気に叩いてしまおうということかな。


「させないけど」


俺はチェーン・バインドを6重に発動。

長殿の右後ろ脚に巻き付ける。

動きが止まってつんのめったところで頭にディレクト・シフトを発動。

前向きの慣性を下向きへと変更。


同時に俺も小太刀を抜刀して2階から長殿の頭上へ飛び降りる。

頭が地面に向かっているのを利用して左手で頭を押さえ、右手で首筋に小太刀を据える。


観客が静まり返る。

え?


「そこまでだな。勝者、リブレ、レイン組!」


カイルさんの言葉を聞いても歓声があがることなど全くなく、静寂が辺りを包む。

ってか闘技場の外の音が聞こえないんだけど。

国民総出でこれ見に来てたりする?


俺もどうしていいかわからず、とりあえず長殿から手を放してレインと合流する。


「どうしたのかな?」

「すっかり存在も忘れてたリブレさんがいきなり現れて、次の瞬間長さんを組み伏せてればこんな反応にもなりますよ」

「いや、そりゃそうだと思うけどさ。あまりにも時間が長すぎるだろ?」


そろそろ我に返ってもいい頃だろ。



立ち上がって獣から獣人の姿に戻った長殿は頭を下げる。


「参った。先ほどは無礼を言って済まなかった」

「いや、それはいいよ。実際こんな感じじゃないと勝てないから」

「いや、それも立派な強さだ。この結果を見れば誰もがわかる。これで協力に異論をはさむ奴もいないだろう」

「そうだといいな」


この辺りでようやく理解が追い付いたのか、観衆がドッとざわめき立つ。

うるさっ!


「リブレさん……!」

「ぐふっ!」


いつのまにか近くまで走ってきていたプリンセが激突してきた。

そのまま抱き着いて俺を見上げる。


「さすがだね……!」

「うん、ありがとう。だけど、そのスピードはまずい……」

「あ、ごめんなさい……。つい……」

「次からは気を付けてくれ……」


色々出てきそうだった……。

胃の中のものとかじゃなくて胃そのものとか……。



「皆の理解が追い付いていないようなので、少し解説するが、構わんか」

「やってくれ……」


「うむ。まず、いきなり現れたちっさな子はリブレの杖の化身だ。彼女は見えない壁の管理をしていた。息子が進んだり止まったりしていたのはそのせいだな。次に、レイン嬢は【魔妖精】の二つ名ダブルを持つ。実力は見ての通りだ。で、これを画策したのが【探求スル者エクスプローラー】、リブレだ。あの状況になれば自分が忘れられ、レイン嬢の方へと突撃するのを読み、真上に陣取っていた。まぁ、見えた者はおらんだろうがな。で、こんな結果だ」


まぁまぁ詳細にするね!

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