視えちゃってたんで……
「……」
「……やっぱり動揺しないんですね……。僕、いえ、私はけっこう勇気振り絞ったんですけど……」
その言葉が示す通り、レインの顔は首のあたりから耳の先っぽまで真っ赤だ。
いや、よく見ると手も真っ赤だな。
まさか全身真っ赤か?
「いや、俺も動揺はしてるさ。でも、ほら、俺の眼のことは知ってるだろ?」
「やっぱり……!」
レインは正座のまま体を折って蹲る。
「なんですか僕!? 相手に好意がばれてるのにあんなにツンツンキャンキャン喚いて! リブレさんがツッコミだけで怒らないからまさかとは思ってましたけど!? なんですかあの不毛なやり取りは! 僕だけ馬鹿見てるじゃないですかあぁぁー!!」
「プリンセたちが起きるって! 1人称も『僕』に戻ってるぞ!」
俺は叫びだしたレインを必死に諫める。
「もういいですよ! 1人称だって無理してましたし!? そりゃ12年間使い続けた『僕』の方が出やすいに決まってますよ!」
レインの叫びはまだ収まらない。
バッと顔をあげると、
「リブレさんもリブレさんですよ!? 一世一代の告白を『知ってたよ?』みたいな顔で流さないで下さいよ!」
「いや、そんな顔してた覚えないぞ!?」
「あんなのそれと同義ですよー! むしろ無言とか一番辛いですからね!?」
「わ、悪かった。そこは認識不足だった」
俺としても告白されるというシチュエーションは初めてだったため、どういう対応をしていいのかわからなかったのだ。
もちろん、告白をするというシチュエーションも皆無だったわけだが。
「で、なんなんですか! 人の告白だけ聞いといてダンマリですか! せめて返事くらい聞かせてくれませんかこのアホー!!」
「お、落ち着け。とりあえず落ち着け。流石にご近所迷惑だから」
プリンセとオーシリアどころか丘の下のエルフの町にすら届いていそうだ。
夜だから丘の上からの声が良く響く。
決して近所ではないところにまで迷惑が及びそうだ。
……数分後。
「お見苦しい姿をお見せしました……」
冷静になったレインは再び正座で座りなおす。
また別で真っ赤にはなってるけど。
「いや、俺も悪かった。で、返事だっけか?」
「そ、そうですね。えぇ、もはや聞きたくないまでありますけど」
「答えはこちらこそ、だ」
「はい?」
ポカンとするレインに俺は言葉を重ねる。
「だから、俺も好きだって言ってるんだ。俺としても人を好きになった経験がないから、よくわからんけど」
だが、レインを好きだというのは、まぁ本当だろう。
俺は自分の{感情}は視えないので、はっきりはしないが、これが違ったらなんなのだろうかってくらいの確信はある。
「そんなあっさり言います……?」
「視えてしまう俺としては、なんか感情はストレートに真面目に伝えたほうがいいと思うんだよ。回りくどいのとか要らない。好きなら好きって言うし、嫌いなら嫌いって言う」
まだ状況が呑み込めていないレインに俺はさらに語りかける。
「俺も人と付き合った経験がないからわかんないけど、俺が16歳で、レインが12、いやもう13か? こっちではどうか知らんが、俺がもといた場所では中々に心配される年齢だ」
主に
「ま、なんだかんだ喧嘩とかするだろうけど、それはいつものことだしな。それなりに仲良くしていこうや」
喧嘩するほど仲がいいってな。
「はい! うぅー……、はいぃ……」
レインは俺のお腹の辺りに抱きついてそのまま泣く。
「おいおい、泣くことかぁ?」
「うぅー……」
レインが放してくれないのでそのまま俺たちは家の裏手で夜を明かしたのだった。
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