再会は劇的に

眠ってから目を覚ますと、キラがもう作業していた。

いや、、か?


「キラ、もしかしなくても寝てないよな?」

「やぁ、おはよう。あ、うん、そうだよ。1日2日の徹夜くらいわけないよ」

「ダメだ、寝ろ。徹夜でも別にいけるってのには同意するが、別にいけるだけで万全じゃないだろ。こんなとこで寝ても万全には程遠いだろうが、眠れるときに眠っておくべきだ。ただでさえ、こんなとこ来てるんだ。キラがより良い状態じゃないと、俺の死亡確率が上がるだろうが」

「最後のはいらんじゃったじゃろうに……」


いや、ほんとにもめ事が起こった時に俺たちが無事に帰れるかどうかはキラにかかってるといっても過言ではないからな。

命、大事。


「そうだね。じゃあ、お言葉に甘えてこれを見終えたらちょっとだけ寝させてもらおうかな」


キラが1冊の本を持って示す。

ん?

今、こっちの山から取ったよな……。


「もしかしてそれが終わったら残り1冊か?」

「うん、そうだよ? 途中から慣れてきて効率が上がったからね」


吸収の早さエグイ。



「じゃ、ちょっとだけ横になるね。何かあったら起こしてくれて構わないよ」

「あぁ、しっかり休め」


キラは壁にもたれて座ったまま目を閉じる。

いや、横にならんのかい。

なんだその武士スタイル。

俺も一時期やってみて出来るってことがわかったけど、やっぱり寝ころんだ方が休んでるって実感があっていいよな。

もしかしてこいついつもこうやって寝てるわけじゃないよな?


キラが眠ってから俺とオーシリアは読める本の残りを消化する。

とはいっても、俺たちに読めるものだからこの中では比較的重要度は低いものだろう。

あまり撮らなくてもなんとかなりそうだ。



読み終えて、キラが持ってきていた砂時計を見て時間を概算する。


「えっと、今が午後2時くらいか……?」


脱出は侍女たちが眠った後だから午前2時頃だろうか。

あと12時間か……。

やることがないと逆にしんどいな。


そういえば、この辺り昼はどうなってるんだろう。


「オーシリア、外見るからステッド・ファスト解除してくれ。声出すなよ」

「了解じゃ」


ステッド・ファストが解除され、スルー・アイで周りの様子を見る。

どうやら、四方の壁の魔法は外からの発見を阻害するためのものらしく、中からは外の様子がわかる。

館の中は侍女たちがパタパタと動き回っている。

掃除したり、長についていったりと様々だ。



「離して! 離しなさいよ!」


館の中を見ていると、外に面している壁の方から聞き覚えのある声が聞こえる。


「この声は……!」


キラも声を聴いて起きてきて、壁に耳をつけてる。

俺がスルー・アイを外へ向けると、エルフ達にエイグが押さえつけられていた。


「なんでそんなことになってるんだよ!?」


あ、やべ、思わず大声でツッコんでしまった。



「どうやらまだいるようですね……」


その声と共に壁の向こう側に炎と黒い靄が広がる。


「キラ! 下がれ!」


俺が叫ぶとキラは反応して俺の後ろまで下がる。

その瞬間、ジワッと壁に闇が拡がり、爆発が起こった。

明らかに魔法による攻撃だったため、俺は小太刀を抜く。


「よりによってここに侵入するとは……。どこの愚か者ですか。いえ、侵入できている時点で愚かではないのでしょうね」


そう言って俺たちを仕留めるべく壁をぶち破って姿を現した相手を見て、俺は言葉を失う。


「レイン……?」

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