家の構造はまちまちだよね

「どうか致しましたか?ご気分でも優れないので?」

いつの間にか話が一段落ついていたらしく、俺の視線が落ちているのに気づいたファルスが心配してくれる。

「いや、大丈夫だ」

ここで余計な詮索をされないためにも一旦、視線をあげる。


護衛としては食事なんて護衛対象を守れないから愚行以外のなにものでもないわけだが、人がいい食事をしているのを間近で見るというのも精神衛生上あまりよろしくないものがある。

特に今回はコース料理のようなもので食事自体にかなりの時間を要するため、俺は空腹になってくる。

プリンセにはこんなこともあろうかとそこらで買ったクッキーみたいなのを持たせてあるのでそれをもぐもぐ食べてる。子供だからと見逃されている面があるとはいえ、素直に羨ましい。小麦文化だからクッキーはあるんだな…。



空腹と戦うこと更に数十分。

やっと会食が終わり、玄関へと案内される道すがら俺はまた屋敷に違和感を覚える。

「部屋が小さくないか…」

廊下の長さと部屋の大きさに整合性がとれていないところがある。

不審に思ってスルー・アイを向けるも、その空白部分は魔法によるプロテクトがかかっているようで中を見通すことが出来ない。

怪しすぎるだろ、あそこ。普通はスルー・アイなんざここで使うことがないんだろうから気づかれないんだろうけど、部屋の大きさとの不一致とかキラなら行きの段階で一瞬で気づいてるだろうな。



「ふぅ…、終わったのですわ…」

「お疲れ様でございます」

さすがのルーリアも緊張していたらしく、屋敷を少し離れてから大きく息を吐く。

「普段通りどころか、普段よりもしっかりして見えたけどな?」

「それもそうですわ。さすがにへまをやるわけにはいきませんもの。カイル殿の時よりは幾分かましでしたが…」

ルーリアはそこまで言って言葉を切る。

「あの時の緊張は誰か様のおかげで吹き飛びましたけどもね?」

あ、これ俺がカイルさんにタメで話しかけたことを言ってるのか。思わぬとこから蛇が出てきたな。

折角疲労で俺への怒りを忘れかけてたっぽいのに。


「はぁ…」

家についてもう一度息をついたルーリアはもぐもぐと昼食を頬張る俺に視線を向ける。

「仕事はしていただけましたし、これ以上は過剰ですわね…。これからは前のように接させていただきますわ」

「それで頼むわ」

ラッキー。最悪を清算してもらってでも戻してもらおうかと思っていたところだ。

居心地が悪いことこの上ないし。


「それで、何か進展はありましたか?」

「とりあえず、レインがいることは確認されなかったな。プリンセはどうだった?」

すぐに食べ終わってルーリアが奢ってくれたゼリーを食べてるプリンセに聞いてみる。

「んー、あそこにはいたと思うよ?強い匂いと弱い匂いがあったから。でも、わたしの鼻ってどこにいるかまではわかんないよ…」

「いや、ありがたい情報だ。ありがとう」

頭を撫でるとしっぽがゆらゆら揺れる。喜んでいるようでなによりだ。


「しかし、リブレさんに見つけられないとなるとどうなっているのでしょう?」

「そこなんだよ」

もう少し情報を精査する必要があるな。


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