拒否権のない問いってあるよね
「えーっと?」
寝ぼけた頭で状況を理解しようとする。
「まず、エルフ達に
「その通りですわ」
「で、その護衛に俺を連れて行くと」
「えぇ」
なぜ俺。戦闘力的にこの国の
ルーリアが伝達に行くことにはなんの不思議もない。王族だし、王位継承者だ。これ以上ないほど敬意をもって接していると言っていい。
にしろ俺を連れて行くとはこれ如何に。
「こういった話し合いの場にはケインさんは向きませんし」
脳筋だからな。
「エルメさんは有給をとってますわ」
この国家の一大事に!?さすがに肝が据わってるな。
「キラは万が一のため、王宮に残しましたわ。すると、残るはあなただけというわけですわ」
「…俺に戦闘は期待しないでくれよ?」
防御とか搦め手なら得意分野だが、真正面からの戦闘は荷が重い。
「防御していただければ十分ですわ。攻撃はわたくしが致しますから」
そう言ってルーリアは笑う。
「わたくし、リブレさんがいない間に序列を35位まであげましたの」
やべ、超かっこいい。
「で、俺がここにいるってのは誰に?」
「お母様ですわ」
マレイユさんか。
「いずれリブレさんは向こうに突入することになるでしょうからその敵情視察にでも使ってみてはどうです?との伝言をいただいてますわ」
さすが、マレイユさん。「やるからには成功させろよ」との圧をかけてきたな。
こちらとしてもありがたい話だ。キラが入れなかった場所に合法的に入れるんだからな。せいぜい構造を把握するのが関の山だろうが、情報がないよりも数百倍ましだ。
「で、それを伝えにわざわざここに?」
「?なんのことでしょう?」
「いや、それを伝えるだけならキラに来させればよかっただろ?」
はぁー、とルーリアはため息をつく。
「ですから、今から向かうのですわ」
「は?」
すごい間抜けな声が出た。
「早くないか?」
方針決めの会議があったのって昨日のことだよな?
「こういったことは早め早めに行動するのがいいのです」
そりゃそうだろうけども。
「俺、帰ってきてから2日目だぞ?いくらなんでも働きすぎじゃないか?」
「仕事を放って姿をくらませていた人物に覚えがあるんですのよ。誰とは言いませんけど」
ふむ。誰だろう。
「あれは大変でしたわ。あの計画をちゃんと通せる人なんてそうはおりませんし」
大変だったんだろうなー。
「今回も無茶なことをしようとするのを黙認程度では済ませようとしているのですわー」
「慎んで、お受けいたします」
こいつ、俺がいなくなったのにかなり怒ってた一人だな…。
「で、まずどうすりゃいい?」
「とりあえずは、その格好ですかね」
ストレートなディスり。
俺は身だしなみに気を遣うほうではない。そもそもニートに身だしなみなんて概念はない。家から出ないのだから。
ただ、こっちに来てからは積極的に外に出ているので寝ぐせくらいは整えるようにしてるし、服もレインの父親の外出用の服を拝借している。多少人間用な風に変えてはいるが。
それでも髪は伸びるのでもっさりしてくる。
「その髪はとりあえずどうにかしたほうが良いですわね。ファルス」
「はい」
ルーリアが名前を呼ぶと、執事風に男装した女性が姿を現す。
「髪をさっぱりさせてさしあげて」
「承知しました」
その短いやり取りのあと、俺はものの数十秒で散髪を済ませられていた。
素直にすごくね。
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