寝起きって思考力低いよね

「ふー…」

朝、目を覚まして天井を見上げる。

とりあえずはレインのとこに行く方法も浮かばなかったし、城に行くことにするか。上の動きがわからないと俺がどう動いていいのか不透明なとこがあるからな。

寝起きの働いてない頭で今日の方針を軽く決める。


「ん?」

ふと、お腹のあたりに重みを感じ、布団をめくってみるとプリンセがいた。

俺がこっちにきたのが春先のことであり、気候に違和感は感じなかった。つまりこっちでも春のような気候だったのだ。そして、今はこの国は冬を迎えているらしい。隣に砂漠があるので実感がわきにくいが、森の方は雪に包まれており、草原の方も冷たい風が吹いている。城のあたりは砂漠側なので温暖なのだが、エルフ街の方は森よりなので、かなり寒い。

布団は春用のもののままなので、プリンセには寒かったらしい。ドルガバは砂漠の中にあるからな。だからこそ作物が育たないわけだし。


俺は寝るときに仰向け一択なのでそりゃ比較的お腹の上は安定しているのだが、なぜわざわざそこにいったのか、そして寝づらくないのかと疑問には思う。

しかし、そんな疑問もこのスヤスヤと眠る顔を見れば吹き飛んでしまう。

幸せそうに眠るプリンセの頭を撫でながらぼんやりと思う。

「これが至福か…」


「いえ、犯罪ですよ」


いきなり横から声がかかり、びっくりしてそちらを見るとルーリアが立っていた。

「他国の要人の姫君と同衾どうきんとは…。事の重要性をお分かりで?」

「同衾とか言う!?」

俺が跳ね起きてプリンセは転がり落ちるが、起きない。すごいな。

「これは同衾とかじゃないから!プリンセはまだ6歳だぞ?そんなことするわけないだろう!?」

「そうやってムキになるのがなによりの証拠では?」

「ぐっ…」

「なにより、同衾という言葉にわたくしは『共に寝ること』以外の意味を込めておりませんけど、なにと勘違いされたので?」

「うっ…」

「そもそも数回しか会っていない他人と寝るのは問題ではないのですか?」

「…すみませんでした。許してください」

「許すことなどありませんけど、なにがですか?」

謝らせてもくれない…。


プリンセに布団をかけ、とりあえずリビングへと移動する。

「どうやって入ったんだ?」

「鍵に詳しい者を連れてきましたので」

「圧倒的不法侵入!?」

そうだよな!?俺夜に戸締り確認したもん!

「今度からチェーンみたいなの考えないとな…」

この世界でチェーンとか物理的なのは効果が薄いとは思うけど、ないよりはましだろ。

俺も気が緩んでしまっていたみたいだ。魔界では寝床に魔王アンリさんが闇討ちに来た時も気づけてたけど、こっちに帰ってきて安心しきってたのかもな。気を引き締めなきゃ。


「じゃあ、なんでこっちまで来たんだ?」

ただ俺を呼びに来るだけならキラをよこしたほうがよっぽど効率的だ。昨日、姿が見えなかったのも関係しているのか?

「もしかして昨日いなかったのと関係ある?」

「いえ、ありませんが」

ないんかい。


「じゃ、なんで?」

「これからエルフの代表の方にランガルの方針を伝えに行くので、その護衛を頼みたいのです」

は?

「俺が?」

「その通りですわ」

なんでそんなことに。

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