覗きは犯罪です。

「おい、さっきまでこれなかったよな…」

「はい…」

俺とアンリさんが握手を交わしている間に何があったのか…。


俺とアンリさんはすぐに外に出て周りを見渡す。

「あ、お話終わったのー?」

そこにはお風呂のアメニティを用意しているリオンがいた。

「この壁はどこから持ってきたんだ?」

「え?えっとー、暇だったから倉庫を歩いてたら『温泉用仕切り柵』って書いてたのがあったから、これも使うんだなって思って持ってきたんだけどー…。違った?」

合ってるだけに否定しづらい…。


「なんであんなの持ってきてたんだよ!」

「しょうがないだろ!?見てた時に風情があるなと思って貰ったんだよ!」

「もっと人目につかないとこに置いとけよ!」

「こんなことになるなんて思わないだろうがよ!」

俺たちがひそひそと内戦している間にリオンはいそいそと入浴準備を行っていく。


「じゃあ、こっちに私入るからパパと弟君はそっちに入ってねー。じゃあ!」

そう言って引っ込んでしまった。

「……」

「……」

言葉をなくす二人。


「えっと、これは目論見は外れたけどちゃんと俺は帰れるよね…?」

「…そうだな。俺も帰すって言ってしまったからな…。特に損になることをされたってわけでもないしな…」

意気消沈しながらも俺たちはうだうだと入浴する。

「ほぉー…」

久しぶりに天然の温泉に入ったな。気持ちのいいものだ。

「これが温泉というものか…。空を眺めながら入る風呂というのも悪くないものだな」

気に入ってもらえたらしい。


「ここはあまり電力が発達していないからな。夜に入ると星空が見れていいと思うぞ」

ライトアップされた温泉というのもいいものだが、やはり俺は天然のものを活かしたい。昨今の日本では星を見る機会がめっきり減っているからな。絶対に綺麗だろう。

そんな他愛のない話をしながら俺はある準備をしていた。それはスルー・アイの発動準備である。アンリさんには悪いが、こっちにはこのスキルがあるのだ。他の人の目からは発動時と通常時の違いがわからないためアンリさんおやの前ですら発動可能!

特にそういった欲はないのだが、温泉の露天風呂でそれをやらないというのは失礼にあたるだろうさ。


「ん?お前なんかしてねぇか?」

「え?いや?なんのことだ?」

「いや、なんもねぇならいいんだ。俺の勘違いか…?」

さすがに鋭い!だがそこは特技であるしらばっくれで回避。そろそろレインには通用しなくなってきてたけどな…。


さて、頃合いかな…。

スルー・アイ発動!

壁を透かして女湯側の景色を拝む。遂に桃源郷を我が目に…!

「なにをしているので?」

「うわあぁぁーー!!??」

目の前にヘスティアさんが現れた!?

「な、なんで男湯こっちに!?」

「私には性別は存在しませんので。それより、今回は見逃して差し上げますが、次はないですよ?」

笑顔の忠告の前に必死に頷くことしかできない俺。

いつの間にかアンリさんいなくなってるし!危機管理能力高いな。


まあヘスティアさんの服が濡れて張り付いててヨカッタからプラマイゼロとしておこう。

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