強者との邂逅

「リブレさん……」

「なんだ……」

「これどうするんですか?」

「どうするって言っても……。どうしようもないだろ」

「それはそうですけど! どうしようもないで終わらせていいんですかこれ!」

「とりあえずドロップ品の加工すれば?」

「は! そうでした!」


それを思い出すとパッと顔をほころばせ、下にするすると降りていく。



それにしてもな……。この木はよくあの爆発に耐えたな。なんか由緒ある木だったりするのかな。まあいいか。


「どうだ?いいのとれたか?」

「そりゃもう大量ですよ! ところどころ爆発に巻き込まれた昆虫系のドロップ品が紛れ込んでるので注意しなきゃですけど」

「あんだけでかかったらな。巻き込まれるやつもいるだろう。ヒトがいなかったのは幸いだったな」



「うわ、なんだここ」


ん? 誰か来た。まぁあの爆発見たら普通気になるわな。

ただ、をみてこちらに足を向けられるということはそれなりの実力、あれを受けても生きていられる自信があるということだろう。何者だ……?



「なぁ、レイン。あれ誰だ?」


加工に夢中で誰かが接近してくるのに全く気付かないレインに聞いてみる。


「え? なにがですか?」


そう言ってこちらを見上げてくる。


「いや、だからさ。あの見るからに好青年な感じのやつだよ」


そしてたぶん強い。



「え?」


レインがそいつを見た瞬間俺の後ろに隠れやがった。


「どうした」

「やばいですよリブレさん。彼は二つ名ダブル持ちです」

「つまり?」

「二つ名を冠することができるのは各分野で突出した功績を残しているか、何かに特に秀でているかという人たちだけです。その中で彼は《剣技》に秀でた二つ名を持つ者の一人、【雷剣】キラです」



道理でな。俺も対人武術には覚えがあるんだが、あのクラスは見たことないな。


「えーと、気配的には君たち以外にこの辺りにヒトはいないんだけど。これは君たちがやったのかな?」

「そうだ。ちなみに気配っていうのはどこまで探知できるんだ?」

「せいぜい2キロくらいだよ。君もできるようだけど?」


馬鹿言うな。周囲200メートルが限界だよ。


「いやそれでも異常だと思いますが…」


なんでレインはこんな時も口を突っ込むんだよ!



「この森にあった大きな気配が突然消えたんだ。場所はここ。そして一面焼け野原。警戒せざるをえないんだけど、どうやったのかな?」

「企業秘密だと言ったら?」


その瞬間キラの姿が消える。本能的に腕を上げ体重をかけ、キラの左上段蹴りを受ける!

ガガンッ!!



いったー! やばいな! ほんとに人間かこいつ!


「へぇ。やるね」


そう言ってそのまま攻撃しようとするので


「待った、待った! 言うって! このままじゃ俺死んじゃう!」


するとキラは動きを止める。


「あれを受けられるんだったらそう簡単に死なないでしょ」

「いやほんとに! 俺レベル1だし! HPぎりぎりだぞ!」


ほんとに死ぬかと思った。



「レベル1…? あの体術があって…?」


あ、さっきのでレベル2になってる。レベル1だったら死んでたかもな……。


「そのことはいい! あの爆発はな、粉塵爆発と言ってな?……」


説明すること10分。


「なるほどね。理解はしたけど僕は君がどうやってそれを知ったのかが気になるね」


俺が異世界から来たのは伏せたほうがいいよな……。


「料理で失敗したら起こったのを基にしたんだよ。だからオリジナルだ」


でまかせだが。



「うーん、釈然としないけどまあいいや。それで僕は君たちが倒した地下級サブテラニアの討伐任務で来ていたんだ。国王の命でね」


ん? 国王?


「キラは国王直属の二つ名兵団ダブル・コープスの一員なんです」


そうレインが補足してくる。

この世界にも国とかあったのか。てかなんだその団。こいつみたいなのがいるのか。会いたくねー。恐ろしすぎる。


「で? それがどうかしたのか?」

「僕は王に任務の報告をしなくちゃならない。その時に僕が倒したのではなく、君たちが倒したことも報告する。レベル1の君が格上のをね? すると王は興味を持たれるだろう。わざわざ君たちに迎えをやって目立たせるのもどうかと思ってね。人間とエルフのパーティーなんかそうそうないし。目立たないほうがいいよね?」


合理的なんだが……。



「その報告でキラさんが倒したことにはできないのか?」

「キラでいいよ。それはいやだな。王に嘘をつきたくない」


真面目か。



「君を他の団員に会わせてみたいしね?」

やめろよ。それだけはやめて! また喧嘩挑まれるんだろ? その未来がみえるぞ!?



「レイン、どうする」

「どうすると言われましても……。どうしようもないでしょう」


俺のセリフパクりやがって。



「わかった。確かに自分で行くほうが早そうだ」

「賢明だよ。じゃあ行こうか。リンガルの町北西部の王城へ」



そうして俺たちはキラにレインが加工してくれた肉を持ってもらい王城へ向かうのだった。


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