工夫はするけど凝ってこそ効果はでる

「よーし」


やるか。とりあえずあの猪みたいなの倒してみてからだな。経験値の効率とか気になるし。


「とは言ったものの……」


基本的に攻撃する手段がない俺と弱い魔法しか使えないレインだとやっぱ決め手に欠けるんだよな。

あの大きさのやつが本気で逃げたらこちらには追う手段が全くない。



「そう言えばさっき思ったけどなんでそんな荷物しょってんだ? 邪魔だろ?」

「いや、これには料理の道具とかが入ってるんですよ」


なんでまた。


「エネミーを倒すと食材アイテムがドロップしますが、エネミーのものだけ"鮮度"が設定されてるんですよ」


ふむふむ。


「つまり、倒してドロップしたらすぐに加工しないと腐るってことですね」

「そりゃ大変だ」


肉がなくなる。



ん? てことは……。


「なぁ、加工に必要なのはだいたい持ってきてるんだよな」

「まあ私の技術が及ぶ範囲のものですけど…」

「なにがある?」

「包丁、鍋、フライパン、蒸し器、燻製器、それようのスモークチップ、ハサミ、ナイフ、塩、…」

「あ、もういいわ」


そんなにいるか?


「じゃあ、〇〇〇も持ってきてるよな?」

「ありますけど……」


よし、やってみるか。



とりあえずもしもの時に備えて猪の位置とは遠くにツタを仕掛け、出入りを難しくする。

最悪なにかに入られても気づければいいし、逃げられた時の足止めにもなる。


「でかいと網の目が粗くてもいいから楽だな」

「サボらないでくださいよ? 夕食抜きにしますよ」

「ごめんなさい。ちゃんとやります」



さて、とりあえず全方位に仕掛け終わったし、特に変化ないし、猪の頭上で高いところにあるしっかりしたところを選ぶ。


「レイン、水魔法頼む」

「はい。ウォーター・サプライ」


ここで大量に出てくる水の相対位置を固定していく。


「ステッド・ファスト」


日本語にすると"不動"の意味をもつこの魔法は自分が動けなくなる代わりに他の何かの位置を固定できる。

自分から戦えない俺にとっては何のデメリットもない。



何層にも渡って水のバリアを構築する。


「さて、レイン」

「はい、小麦粉ですよね」

「あぁ、粉塵爆発を狙う」

「粉塵爆発? なんですかそれ?」


やっぱな。この世界は魔法が発達してるから科学が必要ないんだろうな。



「まあやればわかるか。とりあえず小麦粉を上空から撒いてくれ」

「よくわかんないですけど…」


そうは言ってもやってくれる。


「撒き終わったら火を準備してくれ」



「よし、じゃあ猪の真上で火を出してくれ。あぁ、このバリアの裏からでるなよ?」

「わかってますよ……。どう見てもやばいですもん……」

「じゃあいきますよ?サイト・ファイア」


この魔法は視界内ならどこにでも炎をだせるもので利便性が高いが……。


ドォォォォォォォン!!!!!!!


「粉塵爆発は危険性が高いしな……。近くから着火するわけにもいかないしな」

「なんですかこれぇぇぇぇぇーーー!!!」

「え?言ったじゃん。粉塵爆発」

「爆発って言ってたからやばいとは思ってましたけど! ここまでとは思ってませんでしたよ!」


うん。正直俺も。


「まさか森一帯さよならするとは……」



「これ生態系とか大丈夫なんですかね……。あの猪も黒焦げで見る影もないですし……」


……。

知らん! 倒せたからあり!


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