341 ◆爛れた生活
手始めに、身近な友だちを毒牙にかけた。
アタシが(男に)振られたと思って慰めてくれる子たち。
さびしいフリをして弱気なところを見せる。
強いアタシの意外な一面に戸惑う友人。
そこを、縋りつくように一気にしなだれかかる!
強引に唇を奪い、フラウ仕込みのテクニックでまず体から虜にする。
こうして一人ずつ、たっぷりと女同士の良さを教え込む。
特に仲のよかった五人の友だちをモノにした頃、アタシの中で女の子という存在は、守るべきものから愛でるものへと変わっていた。
※
高等学校は国立の名門校に入った。
もちろん、軽く入試をパスできるだけの学力はあった。
ここは三年間遊んでいても、専攻次第では王宮輝士や輝術師の資格も取れる。
この時はまだ明確な目標があったわけじゃない。
単に良い学校の方が、かわいい女の子がたくさんいる可能性が多いと思ったからだ。
その考えは正しかった。
手当たり次第に手を出す
アタシには素質があると言ったフラウの言葉通りになった。
可愛いと思った娘は即座にチェックを入れ、周到に計画を練ってお近づきになる。
そしてある程度仲良くなったところで、一気に落とす。
アタシは元から有名人だったし、街の不良退治とかも定期的にやっていたので、同姓からの信頼はかなり強かった。
より女の子からモテるため地道な活動にも力を入れた。
学業やスポーツなど、一見関係ないことにも全力で打ち込んだ。
あらゆる層から注目を集めることでより多くの女の子をモノにするために。
同学年は勿論、年上の先輩たちもアタシの前ではイチコロだ。
特定の彼女は作らずに、とっかえひっかえいろんな娘に手を出した。
それが分不相応ではないと思われるくらいに、必死に自分を高めてきたし。
もちろん、相手がその気じゃなけりゃ絶対に無理強いはしない。
ただちょっと修羅場になったことも何度かあった。
女の子の中にはかなり過激な子もいた。
授業中に体育倉庫に連れ込まれ、いきなり服を脱ぎだした時はどうしようかと思った。
後日の約束を取り付けてなんとか事なきを得たけれど、あの時は本当に焦った。
さすがに授業中の淫行は停学案件だしね。
バレないようにはやらなきゃ。
あとは二人の娘から泣きながら「どっちを選ぶの!?」詰め寄られたこともあるし、普通に後ろから刺されそうになったことも三回くらいあった。
やはり自分はフラウと比べてまだ甘い。
女の子たちへのアフターケアが足りない証拠だ。
ハーレム維持には、キチンと全力で心血を注がなくては。
はっきり言って、どうしようもなく堕落した生活を送っていたと思う
毎日とっかえひっかえ違う娘と遊び、一年で堕とした人数は数え切れないくらい。
若かったとは言え、よくもまあアタシもあれだけがんばったものだ。
少し落ち着きはじめた二、三年時に新しく作った彼女の数は合わせても十数人程度だったから、その年のアタシがどれだけ無茶をやっていたのかがわかる。
気にしないフリをしていたけれど、フラウのことがまだひっかかっていたのかもしれない。
毎日が楽しかったけど、フラウより良かったと思える女の子はパッと思いつかない。
こんなアタシだけど、やっぱり母には弱かった。
自宅に女の子を連れ込んで励んでいたのを見られて思いっきり叱られたこともある。
そのたびに血塗れになるほど殴られ、二度としないという誓約書も書かされた。
それでもアタシは女の子たちに手を出すのを止めなかった。
次第に母からも呆れられ、放置されるようになった。
次代の戦士を育てるため、お腹を痛めて産んでくれたのに。
こんな娘に育ってしまってごめんなさい。
母の背に送った謝罪の気持ちは本物だけど、欲望を抑える方法なんて知らなかった。
※
一年も終わりに差し掛かったある日。
カノジョたちとお茶をしていたアタシは、興味深い話を耳にした。
「そう言えば、ヴォルさまは今年の剣闘二国大会のことをご存じでしょうか?」
「二国大会?」
剣闘というスポーツがあることは知っていた。
殺傷能力のない模造剣を使った実戦式の剣術風スポーツだ。
輝士を志す者たちにも広く親しまれている、伝統ある競技である。
しかし、ケンカは素手が信条のアタシ。
特に興味を引かれたこともなく、これまで手を出そうとも思っていなかった。
ただ、二国大会という響きが妙に耳に残った。
「その大会がどうしたの?」
「毎年、競技団体の所属地から会場が選ばれるんですけど、今年は初めてうちの学校で開催するんですよ」
この場合の二国というのは、アタシたちの住むシュタール帝国と、隣のファーゼブル王国を指す。
国境を接した大国同士と言うこともあって、両国は古くからの親交があった。
もちろん国際大会に参加できるような学校があるのは
「けど、うちの剣闘部ってあんまり強くないんですよ。開催校が決勝トーナメントに出られないなんて、カッコつかないと思いません?」
今まで知らなかったが、彼女もどうやら剣闘部らしい。
アタシが存在を気にも留めなかったくらいなので、うちの学校は相当弱いらしい。
開催校としてのプライドを守りたいけれど、このままじゃそれも難しい……
彼女はずいぶんと悩んでいるようだった。
「先輩たちも半ば諦めているんですけどね。お国の名誉のためにも、やるからにはいい結果を出したいじゃないですか」
剣闘は我がシュタール帝国から始まったスポーツである。
にもかかわらず近年では優秀な選手は全てファーゼブル王国出身というのが現状だ。
特にフィリア市という
最強の輝士団を要するシュタール帝国も、スポーツになると途端に活躍できなくなる。
理由は良くわからないが、伝統的にそういうものなのだそうだ。
お国柄というやつだろうか?
「ああ、ごめんなさい。つまらない話をしてしまいましたね。それより……なんでしたっけ? ああ、そうです。来週みんなでキャンプに行く予定を――」
実は彼女の印象はあまり残っていない。
正直に言うと、名前すら覚えていないくらいだ。
けれどこの時、アタシは彼女の話に大いに興味をひかれた。
「ねえ、その二国大会ってさ、どうやって参加するの?」
「え?」
怠惰な生活を送っている自覚はあった。
この頃にはケンカをすることもほとんどなくなっていた。
女の子相手に遊ぶしか楽しみのない、よく言えば平穏な、悪く言えば退屈な生活。
元々、アタシは戦うために生まれた人間だ。
暇つぶしを兼ねた運動にはもってこいだと思った。
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