第3章 大賢者様の修行 編 - country sisters -

81 ◆わたしのたいせつなひと

 ねえ、ジュストはどこに行っちゃったの?


「村を出たよ」


 どうして?


「輝攻戦士になるんだってさ」


 きこうせんしってなに?


「とても強い……エヴィルにも負けない輝士のことだよ」


 エヴィル。

 お姉ちゃんをころした、エヴィル。

 どうしてジュストがそんなことしなきゃいけないの?

 本ばっかりよんでケンカもしたことないようなジュストが、エヴィルなんかと戦ったらころされちゃうよ。


「わかってやってくれ。ローザの事はアイツにとっても辛かったんだよ」

 

 やだ、ジュストを行かせないで。


「アイツが決めたことなんだ。見守ってやってくれよ」


 うそだ。

 ジュストがエヴィルなんかと戦えるはずない。

 きっと、ジュストはわたしのことが嫌いで出て行っちゃったんだ。


 お姉ちゃんがしんだのは、わたしのせい。

 ジュストはお姉ちゃんと仲良しで、わたしはいつもお姉ちゃんが羨ましかった。

 お姉ちゃんはキレイで、頭も良くて、村の大人のひとよりつよかった。

 ジュストはきっとお姉ちゃんのことが好き。

 わたしなんかじゃ、お姉ちゃんにはかなわない。


 それで、あの時に思ったんだ。

 お姉ちゃんなんて、いなければよかったのに。

 それからすぐだった。

 あの事件がおこって、お姉ちゃんが死んじゃったのは。

 わたしが、お姉ちゃんなんていなければいいなんて思ったから……


 ジュストはそれを知ってるんだ。

 だからジュストはわたしのことをきらいになったんだ。

 わたしが嫌になって出て行っちゃったんだ。


 神様、ごめんなさい。

 悪いのはわたしなんです。

 どうかお姉ちゃんをかえしてください。

 それができないならせめて、ジュストがぶじに帰ってきますように。


 ジュストはたたかいなんてする男の子じゃないんです。

 わたしはどんなバツもうけます。いたいのもがまんします

 だから、ジュストだけはぶじに帰って来させてください。

 わたしの大好きなひとを、二人もうばわないでください――

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