第5話 私は再び出遭う
今日も放課後がやってきた。結局、先生から頼まれた大掃除の仕事はできなかったから、今日はやらないといけない。それに加え、今日は明後日締め切りの宿題が出された。それも授業の予習だから時間がかかる。昨日みたいなことがなければいいが。
私は学校を出た。一歩ずつ、あの公園に近づく。遠回りになるが、行きと同じく公園の中を通るのはよそう。時間はかかるが、やはり安全を優先させるべきだろう。
そう思って公園の入り口を通過しようとしていたとき――あれはまたやってきた。
熱風――燃えるように熱い風が私の体を押し倒した。
肌が燃え上がりそうなくらい熱い。しかし、その中でも目を開けた。眼球の水分が全て飛んで、痛い。それでも目を見開いた。
目が乾いて視界がぼんやりしていたが、それでも分かった。
また現れた――ドラゴンが。
そいつはまた私のことをじっと見ている。
ドラコーン――鋭い眼光で睨む者。
まさにそんな説明が当てはまる感じだった。鋭い眼差しが私の体に刺さるような感覚がする。しかし私はその視線をずらさない。向こうが睨むのと同じく、こっちも睨み返す。
私を襲っても意味はない。どこかへ行きなさい。私は怖くないの。
――なんていうのは嘘だ。今でも震え上がるほど怖い。早くどこかへ行ってほしい。
でも、それを悟られてはダメ。きっと次は襲われる。
私は息と
早く! 早く私の前からいなくなって――
「離れなさい!」
声とともに降ってきたのは、緑色の閃光だった。それはドラゴンを切り裂くように光って、大きな図体が揺れた。
そして遅れて緑色の髪――セリーヌ・クーヴレールさんが地面に降りてきた。
「離れてなさい」
彼女は昨日の赤い紙ではなく、白の紙に黒い模様が描かれたものを私に貼った。すると、私の体は意思とは関係なく二十メートルほど後退した。
「ドラゴン! 今度こそ退治してあげるから、大人しくしてなさい!」
セリーヌ・クーヴレールさんは昨日のやつに似た赤い紙をドラゴンの体中に貼っていくと、急にドラゴンの動きが鈍った。そして、それが分かっていたようにドラゴンの頭上まで飛び上がって槍を振り上げた。
――だが、槍は当たらなかった。ドラゴンは空に向かって大きく
ドラゴンはどんどん上昇して、よろめきながら空のかなた遠くへ行ってしまった。
私はドラゴンを目で追って、それからセリーヌ・クーヴレールさんを介抱した。
「だ、大丈夫ですか?」
彼女の緑色の髪は少しだけ焦げていて、透けるような肌にもところどころ黒い汚れがついていた。でも――怪我はなかった。硬いアスファルトに体を打ち付けたというのに、
「あの、怪我が……」
「さ、行くわよ」
体を起こして彼女は言った。
「こんな状態で、どこへ?」
彼女は痛むはずの体ですっと立って、懐から人が一人乗れるほどの大きさの白い紙――魔法陣が描かれた紙を地面に広げて、その上に立った。
「何をしてるの。早くしなさい」
戸惑う私を無理やり引き寄せ、紙の上に乗せた。
「今から何を?」
「黙って見てなさい」
彼女は歯で親指の皮膚を噛みちぎって足元の紙に押し付けた。すると赤い汚れがついて、紙の縁に沿って光が現れて――
次の瞬間、目の前にあった景色が消えた。
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