第5話

ものすごいスピードでいくつもの言葉が駆け抜けて行く。



:dareka402: おおおおおお

:dareka234: 見えねええ

:dareka506: ああああああああああああ

:dareka137: 脱いだあーーー

:dareka597: 見せろ!もっと見せろ!

:dareka064: 似架ちゃあああああああん

:dareka716: 俺の似架が……

:dareka266: 助けて!!!

:dareka232: やばい

:dareka795: 録画してる

:dareka374: 警察マダーーー?

:dareka311: ああああああああああああ

:dareka018: 似架あああああ

:dareka883: やめてくれ

:dareka351: 吐きそう

:dareka386: 脱げ脱げ脱げ脱げ

:dareka034: 俺にもやらせろ

:dareka597: まざりたい…

:dareka471: ヤバすぎる

:dareka031: 通報しました

:dareka419: 誰か止めろ

:dareka860: ああああああああああああ

:dareka109: ヤバイ

:dareka280: やめてーーーーーーーー

:dareka794: 気持ち悪いな

:dareka182: 興奮する

:dareka878: ヤバイだろ…

:dareka058: ああああああああああああ

:dareka649: 似架あああああ



影一郎は顔面蒼白でスマートフォンを見つめたまま、立ち尽くしていた。



:dareka638: 気持ち悪い…消した

:dareka401: めっちゃ興奮する、ヤバイわー

:dareka828: 何これ、大丈夫なの?

:dareka861: ケーサツ何やってんの?

:dareka899: おっきした

:dareka819: 見てこれ〜ヤバイんだけど〜〜

:dareka151: 本当??本物かなあ???

:dareka980: 何かのドラマ?怖いんだけど

:dareka016: ドッキリかな

:dareka254: 似架襲われてんじゃん……

:dareka814: 似架ちゃんが…

:dareka763: 助けてーーー!

:dareka929: やめてあげて…

:dareka620: 嫌なこと思い出した

:dareka295: ヤラセだとしてもやっていいことと悪いことあるよな

:dareka288: 似架の表情がマジっぽかった

:dareka093: 誰か通報した?



「似架ちゃん……」


不安な表情のままSNSの様子を眺める影一郎の顔を覗き込むようにして淳は話した。


「まずいなあ……。ちょっと、やりすぎだ。」


慌てる様子もなく淡々と呟く淳の顔を見上げた影一郎。


「淳……っ…。あの……に……。」


自然と目からは涙が溢れ出していた。


「似架ちゃんを…。似架ちゃんを……。」


力の入らない手足を奮い立たせて、影一郎はできる限りの声を振り絞って淳に懇願した。


……!!!」


その表情はいつになく儚く、可愛らしくも見える。まるで無垢な少女のように。流れ落ちた涙が少しだけ止まったように見えた頃、淳は影一郎に向けて答えた。


「似架は大丈夫……!」


顔をまっすぐ見上げて、あとに続く言葉を影一郎は聴いていた。


がついてる……!」


淳の曇り一つない眼差しが、不思議と影一郎の不安をかき消すようだった。


「似架が似架を信じるんだよ……」


淳は優しく微笑んだ。どこか心地のよい、懐かしいような、不思議な感じがした。


その時だった、けたたましく入り口の扉が開いたのは。


「似架あああああ!!!」


ストライプのスーツにダークな色合いのコートを羽織った中年男性が立っている。


「似架はどこだぁぁぁぁぁ!!!」


そのまま淳たちの方へ勢いよく駆け寄ってくる。


「私は、似架のチーフマネージャーの岩倉だ。似架がここへ来たことはわかっているんだ!……警察に引き渡すぞ!!!」


自己紹介とともに物騒な挨拶をかましてくる男性に、淳はニヤリとしてそのまま、そばで開いていた窓のへりに飛び乗った。ちなみにここはビルの2階である。


「行くところがあるので。」


するとそのまま、路上へ飛び降りてしまった。


は任せた……!」


「淳っ…!ええぇーーー!!!」


影一郎はすぐに窓から外を見下ろしたが、そのまま淳は繁華街の方向へ走っていった。


「ちょっ…ちょっと!淳ーーー!」


もともと防寒着を来ていたし、靴も履いていたので、特にここから出入りしても困らないのかもしれない。今度自分も降りてみようかな…とすら考えていた。背後の男性のことをすっかり忘れたまま。


「!!!」


男性はとても怒っていた。その形相と低い声で、影一郎に問いかけた。


「これは、どういうことかな……」


一人事務所に残されてしまった影一郎は、まず何から話していいのか、非常に困った。


「あ…えーっと…これは………」


エアコンの入らない事務所内の空気が、それ以上にとても冷たく感じた。

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