第54話 ルミナレスの葉
「アイツ頑張ってんな〜」
「ですね〜」
「・・・。俺はこのままでいいのか?」
呑気な声で話しているアディルと征十郎。そしてそれに疑問を覚えた俺とロープでぐるぐる巻きになっているテルドは戦闘中のヘスティアと魔王イルム眺めていた。
いや眺めていたと言ってもアディルの
そして氷の雨が降り出した所で一度
「ひゃー。ありゃやべえな」
「人型生物が出来る最高峰の戦いですからね。別格ですよ・・・。ところで・・・」
征十郎はテルドを見る。
「大司教様をどうしますか?」
「ん〜。とりあえず縛ったままにしとこうぜ。エリスの嬢ちゃんが動いてんだ。あっちに任せてもいいはず」
それ無責任過ぎないか? ・・・まあ征十郎が良さそうに首を振っているからいいんだけどさ。
「それでお前らの狙いって何なんだ?」
ぶっちゃけ詳しい説明が無かったからよく分かっていない。それに魔王イルムの事も気になる。
もちろん俺はそこまで頭がいい訳じゃない。だから聞いておくだけだ。
「・・・教団側の、か?」
「そうだ。お前らがユタさんを捕らえてどうしようとしてたのか俺はよく分かっていないんだ」
「・・・」
テルドは考え込んでいたが、すぐに口を開いてくれた。
「キリスト教団としては彼女を殺し、
「・・・
なんて応えるとアディルが驚く。主に俺に向けてだが。
「レクト、
・・・どうやら常識だったらしい。こっちの世界の事は勉強しているつもりだったがまだまだだな。
「すまん。分からない」
はあ、とため息をついたアディルだったが、教えてくれるようだ。
「いいか? この世界には正真正銘『絶対に手を出しては行けない』っていう連中が存在する。それが魔王因子を取り込んだ神々の集団、
聞いててヤバそうだもんな。魔王因子を取り込んだ
「嬢ちゃんやベル、ヘスティアみたいな連中を軽く凌駕する化け物で、そいつらに関してのランクは専用の
なるほど。だから阻止するためにユタさんを殺す必要があったわけだ。
「・・・」
征十郎が心配そうに俺の方を見てくる。まあ、仕方ないわな。
「いやもうこの流れだ。俺は協力する」
「・・・そ、そうですか」
ホッと一息つく征十郎を見て、なんか微笑ましいものを感じた。
「俺達の、というか征十郎の目的はユタさんを殺さずに
じゃあイルムの目的はなんだ?
ここに来る前に少し聞いていたが、ヘスティアとイルムは再戦を誓っていた。だから戦っているのは分かる。
だが、ここに来た理由は分からない。だが、今イルム達が目をつけそうな話題は
そしてアイツらは以前レプテンダールにいた時は、より多くの武力を求めていた。つまり・・・。
「
「まさか、意図的に復活を・・・? いや、バーロン殿の仰っていた『空欄も多い』というのはその事か?」
その言い方だとテルドも少し知っているらしいな。
「それにイルム殿は巨大な別空間を造っておられた・・・。大規模な戦闘をあちら側で行うため・・・?」
どうやら仮説は大体正しいらしい。珍しく俺の考えが当たったな。
「と言っても今動いてるらしいエリスの案件が終わってからじゃなきゃ動けないな」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「遅れて申し訳ございません、ワリオル殿、エイストピア殿」
さてさて。現在私はオシャレなカフェでバーロンさんと、かの魔王ディステルさんと交渉の場に着いています。
「謝罪として今回は私が代金をお出ししましょう」
バーロンさんはいつものタキシード姿。魔王ディステルさんは和風な着物ですが、戦闘がしやすいようにカスタマイズされています。
私よりも目線ひとつ高い身長に白髪で赤目。そして黒い和風な模様が書かれた眼帯が特徴のおじ様ですね。こういうのがいわゆる厨二病、リオとシンパシーを感じま・・・。
『あ? 誰が厨二病だコラ』
あれ? 違うのでしたらすみませんね。
さて、私がコンタクトを取れた理由ですが。
「まさか普通に探知されるとは驚きましたよ」
リオと私の単純な力技です。『魔女』は基本的にゴリ押しが大の得意、というのが基本なので。
「そう言えばエリス殿。エリアル殿は元気か?」
・・・。そうでした。他国にはまだ父さんが殺されているという事を知らないのでしたね。
「はいエイストピア殿。先日はオストレアへと楽しく釣りに行っておりました」
「ほう? 態々水上都市までか。楽しそうで何よりだ」
・・・辛いですね。既に自分の中で片付けたつもりだったのですが。
「それでかの雷閃の魔女殿が我々にどのような要件でしょうか?」
バーロンさんが気障っぽく話しかけて来ました。
「そうですね・・・」
私もこの話は辛いので本題に入りましょうか。
「今回は貴方達と協力関係を取りたいと思ってこの場を設けさせて頂きました」
と、私が言いましたが二人は驚く素振りはありませんでした。
「ふむ。つまりエリス殿は我々の目的を知った上でここに来ているという訳だな?」
「・・・説明して頂けますか、雷閃の魔女殿?」
私が話しやすいように促してくる辺り、ほぼ確定でしょう。
「まず、貴方達の目的は『
まあ普通に考えればそうなりますよね。誰でも分かる話です。
「何故復活させようとしてるかは一度置いておきましょう。そして私達は『復活をさせずにユタさんを助ける』というのが私達の使命・・・ではございません」 「・・・ほう?」
ディステルさんはニヤリと笑って続けろと促してきました。
「私達の最低限は征十郎さんが望んだ『ユタさんを助ける』という事でいいんです。これさえ達成出来れば問題無いはず」
中々変な事を言っていますね。ですが結局私達は
あと三日ありますが恐らく見つからないでしょう。
これは陛下が言った言葉で気が付きました。
『俺達と手を・・・』
の続きは、組もう。という事を言いたかったのでしょう。しかしそれを途中で止めた、つまりは結局後で協力関係になる必要があるはず。
「なら我々に協力すると? 実は我々も彼女を殺さなければ
こちらを試すような質問。面白くなってきました。
「いえ。それは有り得ません。人柱、それはワリオル殿の
なら何故キリスト教団はそれをしないのか。
それは移植の難易度が高く、誤作動を起こせば暴走した状態で復活される可能性があり、更には恐らく教団はそれを行える魔法師は存在しないからです。
だからキリスト教団は魔王ディステル軍と協力して移そうとした、と考えるのが自然ですね。
もちろんそれは彼らがやった事なので私が少し話せば理解してくれます。
「私は多く語らん。最後の質問をさせてもらおう。我々が
そう。それが正しく最後の疑問点、復活させるメリット。これは意外と陛下が知っていましたね。
『どうかな? 多分彼らと君の目的は同じだと思うけど・・・?』
という言葉。これは今回の一件では無くこの旅の目的を指していると考えればすぐに出てきます。
かの大悪魔アムネルから授かり、冒険者組合エルフィム支部の長バルクァンさんから頂いたあの指輪。
「世界を攻略する鍵を手に入れる事が出来る、それだけで充分なメリットでは無いでしょうか?」
「・・・、ハハハハハハ!!!」
ディステルさんは突然破顔し、笑いだしました。
「流石エリアル殿の娘だ! いいだろう。それさえ分かれば我々と手を組むには充分だ」
私は小さく一息付きました。これで戦闘を行わずに済みますね。
「・・・しかし、よろしいのですか?」
「構わんさ。彼らは強い。正直我々だけで
・・・。はめられた。いえ、そんなことは無いでしょう。
この言い方ですとわざと探知を薄くしていた可能性が高いですね。
「一度私と戦って生き残っただけはありますね、魔王ディステルさん」
「ほう、気が付いたか。レプテンダールの時、バーロンでは無く私が戦った事」
あの時使っていたのは外世神話の魔法、そして今着ているのは和服。まあぶっちゃけこれだけですが理由としては充分です。
「にしても、貴様らも世界を攻略するための鍵『ルミナレスの葉』に手を出しているとはな。私や物好き国王、そして今は亡きアムネルだけでは無かったようだ」
あの鍵は『ルミナレスの葉』と呼ばれているのですか。それに、陛下もこれを欲している・・・。
「お互いにルミナレスの葉が欲しい、という事ですので・・・」
ここで私はニヒルな笑みを浮かべてみました。
「早い者勝ち、でいいのでは?」
そしてそれを見て同じような笑みを浮かべてくれたディステルさんを見て答えを確信しました。
「いいだろう。・・・条件は五分、これは簡易契約魔法で後に記すか」
簡易とはいえ約束は絶対に守られます。無理やり解除は出来ますけど辞めておきましょう。
「ではでは。私は上で戦っている二人に声をかけてきましょう」
私は機嫌良くスキップしながら定員にカードを投げつつ外へと出ていきました。
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