第46話 龍王の集い



ふう・・・。浴衣に着替えた私達はレクトさん達と一緒にご飯を食べた後、定番の卓球で盛り上がっています。

しかし、私は一度抜けなければいけませんね。

「レクトさん。少し席を外しますね」

「ん? 分かった」


こうして、一人外へ出てしまいました。こうしなければ人が来てしまいますからね。

「とりあえず、〈念話〉メッセージですかね」

夜ももう9時ですから・・・。お、来ましたね。

「もしもし。エリス・セクトルスです。お久しぶりですね陛下」

『・・・珍しいね。君から寄越してくるなんて』


ええご最も。

「実に二年ぶりに陛下の声を聞いた気がします。お元気でしたか?」

『うん元気。って、御託はめんどくさいから要らないよ。要件を言ってくれないかな』


陛下はいつもこうです。お世辞や建前を嫌います。

「ではまず一つ。エイリプトさんの今後はどうしますか?」

『うーん。現状、遊ばせる程余裕無い訳では無いよ。俺の計画じゃ、エイリプトは入っていないから』


陛下の計画、ですか。これはまた碌でもない事を考えていそうですね。

「では、今後も此方にいていいという事でよろしいですか?」

『そうなるね。緊急の連絡で何処かに飛ばす時はあるけど、それ以外は好きにしてもらって構わないさ』


「それなら有難いです」

エイリプトさんがいなければここから先の戦いは恐らく勝てないでしょう。・・・それすら見越しているのが陛下・・・。なんて、考えたくないものですね。


『で? 要件はそれだけなはず無いよね?』

顔を合わせてないのに見透かして来るあたり相当の変態ですね。

「ええ。・・・先日、魔王ディステルの配下とレプテンダール内で交戦しました。それに関しての対策はどうなっていますか?」


『はぁ〜・・・』

何故か、陛下にため息をつかれました。何故でしょうね。さっぱり検討もつきません。



『ストレートに言いなよ。今、世界で何が起こっているのか、ってさ』



・・・。

「見透かしてましたね?」

『当然だよ。魔王ディステルの配下が動いていたという事に関しては言わずもがな理由がある。でも何故穏健派な魔王ディステルなのかって所』

私は一応個人で調べていましたが、情報が一切出てきませんでした。


「陛下は情報規制していますよね?」

『だからなんだって言うのさ。ここで言った事が真実とは限らないよ・・・。でも一つ教えてあげるよ』

おっと? 耳寄りな情報でしょうか?


『この国三人目の魔女生まれた・・・。という事で他国では既に対策会議や各国トップの会議が行われている。主に主導権を握っているのはここから9000km西にあるアスティルカ帝国だよ』

「アスティリカ帝国って。・・・まさか!」

アスティリカと聞けば誰もが思い浮かぶ対象。私には真っ先にそれが浮かびました。


『そう。焦炎の魔女こと、ファルティナ・グリード・デルテリアさ』

この世に存在する五人の魔女の一人・・・。

「完成された魔女、そして相性の問題ではエイリプトさんを凌ぐ存在・・・。あの方の性格からすると、協力しない国を自ら滅ぼして回ってるのでは?」


『お見事。正解さ。ここ三日で19の国が彼女に滅ぼされた。・・・たった一人でね』

それは仕方がないでしょう。彼女の魔法、そして契約している灼熱界の炎龍王ムスペルヘイム・ドラゴンロードは一定範囲内の焼却に特化しています。


「・・・凄い手際ですね」

『あの荒れ者の考えは分からないけどね。強者との戦闘は心踊るけど蹂躙は興が冷める』

何故、この国の魔法師序列上位者は戦闘狂しかいないのでしょうかね・・・?


『まあ、俺が話せるのは以上かな。・・・彼らが動いている理由は話す必要は無さそうだし』

陛下がこう言うという事は、いずれすぐに分かるということでしょうか?

「それでは、夜分遅く失礼しました」

『ああ。。頑張れよ』


そして陛下との通信が切れました。

「彼女と戦うのはもう少し先だと思いますが。他にも忙しい要因があるとすれば・・・。やはり早急に済ませるべきですね」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「おいおい! つまんねーなぁ!」

アイクレルトから8500km離れたとある国。いや、国と呼べるべき城や城は全て焼き尽くすされている。


その国にいるのはたった一人。くすんだ色の赤い髪をポニーテールで結び、口元のホクロが特徴の少女は上空20kmから手に炎弾を掲げながら荒々しく叫ぶ。

「おいカレン! ここの国にゃ雑魚しかいねえ! 隣も燃やして来てえぜ!」

『わかんなくは無いが落ち着けよ。命令通り、滅ぼしたら国に戻んなきゃならない』


カレン、と呼ばれたのは契約している灼熱界の炎龍王ムスペルヘイム・ドラゴンロード。つまりこの少女こそ、焦炎の魔女、ファルティナ・グリード・デルテリアだ。ちなみに紅煉はメスでいわゆる俺っ娘だ。

『あと、俺の事を紅練と呼ぶのは止めろ。他の名前で呼んでくれ』


そう言われたファルティナは獣の様な品の無い笑みを浮かべた。

「だってなげえし呼びにきぃじゃねーか。だったらこっちの名前でいいだろ」

『・・・』


そして、ファルティナは本国へと飛んで戻る。

「五人目の魔女、イチノセ・アリサ・・・。一回殺り合ってもおもしれえかもな」




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




所変わって別世界。奇妙な空間の中では二体の龍が向かい合っていた。

「おい瑛司。どういうこどだ?」

「・・・その名前は使わないというのが約束だったはずだよ。星導の天龍王オルファリオ・ドラゴンロード

ここは龍王が独自に作り上げた5次元空間だ。5次元空間は言うなれば意識のみの空間であり、そこに住む龍王達はたとえ現実世界での場所が遠くても問題なく会話が出来る。


そしてそこには今、黒死の疫龍王ブラックペスト・ドラゴンロード星導の天龍王オルファリオ・ドラゴンロードが直接話している。

「ここには俺達しかいない。こっちの名前で呼んだって問題ないはずだろ」

「はぁ。ならそうするよ天導くん。それで? どうしたんだい?」


やれやれ、と瑛司と呼ばれた黒死の疫龍王ブラックペスト・ドラゴンロードが首を振る。

「なんでこっちの世界に来てんだよ!てめえは自分から・・・!」

「・・・何か面白い話をしているわね。間黒くんに天導くん、私も混ぜて貰えないかしら」


凛とした声で二人に話しかけてきたのは氷晶の霜龍王メルクリアス・ドラゴンロードだ。

「蒼香!」

「夏真希さんまで来たのか・・・」


ふう、と息をつく氷晶の霜龍王メルクリアス・ドラゴンロードこと蒼香。

「確かに、どうして間黒くんがこっちの世界に戻ってきたは知りたいわ」

「二人共・・・。どうしてそこまで知りたいのさ」


「もちろん、俺達を置いていったお前だからに決まってんだろ」

「この裏切りものー」

蒼香は龍の口からペっと、唾を吐く仕草をする。


「・・・別に。僕の契約者がこっちに来たいと望んだからだよ。・・・ああー! もー! これじゃあ完全にオフ会じゃないか!」

そう言った瑛司の体が黒い光を纏い、姿が小さくなっていく。


「全く。君たちが懐かしい感じを出すからだよ」

瑛司は黒髪で、緩めなショートヘアの赤眼美少年へと変化した。服装は歴史受け継ぐ伝統的な学ランだ。瑛司は何処からかメガネを取り出す。

「お? 懐いな。普通なら見られんし・・・。流れだから俺もそうすっか」

天導も人型へと変化する。ワックスで整えた様なトゲトゲの金髪、蒼眼の美男子だ。次に黒のロングスリーブTシャツに青のコートが現れ、勝手にまとわりつく。


「なんで男子二人は・・・」

「なんなら蒼香もなれよ。こっちの方が素なんだろ」

蒼香は呆れているが、変身するようだ。 蒼白い光と共に水色の長髪と輝く様な蒼眼の美少女となり、身軽そうな白と青のワンピースを纏う。


「これじゃ、本当にオフ会ね。・・・懐かしいわ。顔を合わせるのは1800年ぶりかしら?」

「へえ。こっちじゃそんなに経ってたんだ。僕は10年も経ってないのに」

転移した年代はこの世界に来るのと同様に関係が無い。なので一度他の世界に飛べば、戻ってきた時には年代が過去にでも未来にでもなるのだ。


「その前に。座りてぇ」

と言って天導は指を鳴らして一つのファミレスの店内へと変化させる

「そうね。空間情報の操作は貴方の十八番だもの。それにここが一番落ち着くわ」


外は21世紀とは違う様な夜の近未来。高速道路が浮いていたり、電子光の光を放っている巨大なビルやタワーが存在している場所だ。

「東京グリッデンタワーのファミレスは見晴らしがいいわね」

「高さ800mのファミレスなんて、他じゃ本土にしかねえだろ」


と、三人は思い出に浸っていた。

暫く雑談した後、天導は本題を聞く。

「で? てめえはあのちびガキの事が気に入ったのか?」


瑛司は優しく笑う。それは裏表の無い笑みだ。

「うん。彼女は優しく、そして心は強い。それなのに両親から見放されてしまってね。だから僕が代わりの親として見てあげなきゃって」


天導はその言葉にニヤニヤしていた。

そんな緩い空気にとある二人の声が刺す。


「おいお前ら! 勝手に俺ら抜きで話してんじゃねえぞ!」

「うちらを抜きで話してはるなんていけずな人達やな〜」


ズカズカと無遠慮に入ってきたのは、赤髪ショートで長身の女性。目の辺りには大きな切り傷があり、身にまとっているスーツの腕部分にも切り傷が存在している。


そしてもう一人はおしとやかなな京美人といった雰囲気だ。緑の長髪をくしで留め、から傘を持って歩いてくる。そして京美人に似合うひらひらと靡く緑を基調にした着物は正しく至高の一品だろう。


「おっ紅煉と風那も来たみてえだ。これでこの世界にいる龍王は全員揃ったな!」

「・・・にしても、君たちまで僕達みたいに人化しなくてもいいんだよ?」

そう。この二人は両方とも滅界の七龍王セブンス・カタストロフィ・ドラゴンロードなのだ。紅煉こと言峰紅煉が灼熱界の炎龍王ムスペルヘイム・ドラゴンロード、風那こと霊末風那は流風の鳳龍王エアリアル・ドラゴンロードと名乗っている。


「にしても皇太、なっつい所を創ったな! ちゃんと人もいるし・・・。タブレットくれ。注文する」

「未落獅はん。お注文しなくてもええんよ」

風那はニコッと紅煉に微笑みかける。未落獅とは元々の紅煉の苗字だ。


「いいじゃねえか。こういうのは雰囲気だろ。・・・そういや俺のボーイフレンドとキザ野郎がいねえな。透はなんか知らねえのか?」

透、間黒透は静かに首を横に振った。

「倉道くんと海南鋼くんは別の世界だよ」


紅煉は目に見えて落胆し、面白半分で苛立った。

「てめえが連れてこいや学ランメガネ」

怒っているようで内心楽しんでいる。

「・・・そのまんまじゃないか不良娘」

「てめえもだろ」


「この光景も懐かしいわね」

ボソリと蒼香は呟いた。

「そうやんね〜」

「間黒から色々聞き出そうとしたんだが、そんな雰囲気じゃねえな」


天導皇太は注文用のタブレットをテーブル下から取り出して、全員分のドリンクバーとロシアンルーレットたこ焼きを注文して、二人の口喧嘩遊びをニヤニヤしながら眺めていた。

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