6日目(12)―最後通告
――19時30分
龍馬たちの生放送が突然、再開された。
もちろん、最初に映し出されたのはスカルの目出し帽の龍馬だ。
やはり、低く加工された声で龍馬が語り始める。
「政府および警察に告ぐ。先程の茶番はなんだ? あの映像に映っていた女性を母に持つ人間は、我々の仲間に存在しない。ゆえに、痛くも痒くもない。念のため、先の映像を人質である44名の生徒に見せたところ、ひとりの生徒が自分の母親ではないかと勇気を持って名乗り出てくれた。生徒は、ひどく立腹しており、どうしても言いたいことがあるらしいので発言を許すことにした」
すると、カメラは人質の生徒たちのバストアップに切り替わる。
画面には、5名ほどの生徒が重なるように映っていた。もちろん、全員がスカルの目出し帽をかぶっている。その一番手前の生徒の制服は、都立港館高校の制服を着ていた。手前からフレームインしてきた碧の手が、その目出し帽を乱暴に剥ぎ取る!
――顕になったのは、眩しそうに目を細め怯えた表情の龍馬の顔だった……。
この映像、じつはすべて録画だった。
生放送にみせかけ、犯人と人質の二役を龍馬がこなし、編集して繋いだものだった。
映像の中の人質の龍馬は、いかにも憔悴した感じの声で語り始めた。
「母さんは……重い病気で。もう3ヶ月以上、入院を続けています……警察のみなさん、なぜ、そんな母を無理矢理あんな場所に連れ出して、
次の瞬間、涙を流し訴える龍馬にスタンガンが使用された。
火花が散ったかと思うと、龍馬はその場に崩れ落ちフレームアウトした。背後にいた人質たちも、その様子に戦慄し、一歩退くような様子を見せた……。
カメラは、再び、スカルの目出し帽をかぶった犯人役の龍馬に切り替わる。
龍馬は、淡々と次のように言って放送を締めた。
「特別にしゃべらせてやったら、調子に乗ってわんわんうるさいので黙らせた。いいか、見ての通り我々に泣き脅しは通用しない。タイムリミットまで30分を切った。人質の生徒44名の命運は、団総理、あなたの決断次第だ」
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