1日目(7)―テロル

 碧はまたひとりつぶやき部屋を行き来しながら、

 第二化学準備室ラボの黒板に謎の走り書きを始めた。


 このモードに入った碧は、もう手がつけられない。少しでも話しかけようものなら、噛みつかれる勢いだ。が、こうなった碧は同時にものすごい集中力とスピードで頭を回転させている。これも元カレとしての経験則だ。ひょっとすると、龍馬が課した無理難題が本当に碧の知的好奇心に火をつけたのかもしれなかった。

 

 だから、龍馬は黙って「天才のひらめき」を待った。


 約10分後。

 碧が突然、ニヤリと笑い始めた。

 いくら美少女とはいえ、白衣でひとりほくそ笑むその様は、さながら狂気の科学者マッドサイエンティストのようにも見えた……。


 黒板には、謎の数式などの他に


「REVOLUTION」


「BOMB」


「INFORMATION DIFFUSION」


 などの文字が書かれ、さらに、その真中に一際大きく



「「TERROR」」



 という文字が書かれ、線でぐるぐると囲まれていた。


 ちょっと物騒な単語も見えた気がしたが……とりあえず、龍馬は尋ねてみた。

「なにか思いついたのか……? 6日間で未来を変える方法」


「フッ、私を誰だと思ってるの?」


 出た! 内心、龍馬は思った。

 この「私を誰だと思ってるの?」は、未来の碧の口癖のひとつだった。

「私は、未来のノーベルプライズウィナー、なんでしょ?」

 さらにそう付け加えると、碧が胸を張る。

 龍馬は頼もしいじゃないかと思いつつ、素直に聞いてみたかった。

 未来の日本の頭脳、碧が導き出した、たった6日間で未来を変える方法を……。

 すると、碧は不敵な笑みを浮かべ、いかにも楽しそうに言い放ったのだった。



「――その方法は、ズバリ……テロルよ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る