5 SUN

 ポインセチアとヤドリギ先生のナイショ話をニコニコ顔で見守り終えたヒイラギさまは、パッと燭台を手に取り、言った。


「改めまして、ボクはヒイラギ。この夜空の反対側で、煌々と輝き、猩々緋に燃える唯一無二の偉大なる星だ」

「燃える、星……?」


 ポインセチアは、自分のベッドの天蓋の裏に描かれた星の絵のことを思い出した。アレは、ヒイラギさまのことだったのか。


「さて。キミたちの話を聞こうか。今日は、そのために呼んだんだよ。日ごろのお礼にって、ヤドリギくんを呼んでも、ちっとも来てくれないから、サプライズでリトル・クラフトマンを呼んだんだ。そうそう。リトルのキミがここに呼ばれることは、特別なことなんだよ」


 それを聞いたヤドリギ先生は、顔をしかめた。


「そのために、ポインセチアを……?」

「こうでもしないと、キミは来てくれないじゃないか。ヤドリギくん」


 ヤドリギ先生に向かって、目を細めるヒイラギさま。


「どうして、ボクが夜空の住人以外にも、この星空を見せているのか、とっても気になるみたいだね」


 ポインセチアとヤドリギ先生は、顔を向かい合わせた。そして、ヒイラさまを見て、深くうなずく。

 それを見て、ヒイラギさまは、くちびるをつり上げた。


「理由は至極、シンプルだ。ボクはね、もっともっと、この夜空を色んなきれいなもので埋めつくしたいと思っている。だからさ」

「ヤドリギ先生の夜空は、最高です! これ以上の星空はありません!」


 思わず叫んだポインセチアの右腕をファーツリーが。そして、大きな手のひらで、怒りに燃えるその口を、ヤドリギ先生がふさいだ。

 ふふ、と口元に手を添えて、ヒイラギさまは言った。


「最高だって決めたのは、キミでしょ? リトル・クラフトマン。ボクは? ファーツリーは? 夜空の住人たちはどうかな?」

「えっ……。だって、それは」

「そもそも、ヤドリギくんがウジウジとずっと悩んでいたのは、ボクと話し合いをしなかったから、悪いんじゃないかな? 疑心暗鬼は、人を弱らせるものさ」


 ウッ、と息をつまらせる、ヤドリギ先生。

 すると、ヒイラギさまが、その薔薇色の瞳をいたずらっぽく光らせて、春風がふりかけられた入道雲を手に取った。そして、そのふわふわとしたスイーツを、ヤドリギ先生にグイッと近づき、そのまま口のなかに、ギュッと押し込んだ。


「うぐっ」

「ああ、わかっているよ。ヤドリギくんは、ボクのことがキライだもんね」

「そういうことをするからでしょう。いくら雲とは言え、夏の雲をこんなに大量に口に放りこんでは、なかなか散っていきませんよ」


 イタズラが成功したコドモのように無邪気に喜ぶヒイラギさまを尻目に、ファーツリーが入道雲をヤドリギ先生の口から取り除いた。


「ヤドリギくん、キミはナイーブすぎるんだ。クラフトマンで一番優秀なキミが奥手では、ダメだろう? 今、この夜空に必要なのは、カンペキな美しさじゃないんだよ。そう———新しい季節風だ!」

「……僕は、そうは思いません。だいたい、誰に見せているんですか。僕らの夜空を」


 ヤドリギ先生が意を決してブツけた質問に、ヒイラギさまは拍子抜けなほと、アッサリと答えた。


「地上の住人だね」


 そして、それを聞いた瞬間、ヤドリギ先生は、ゆっくりと目を閉じた。

 やはり、と思ったのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます