幕間 人間椅子が回収された後

回答話 棚田クリスという幻影

「今思っても棚田クリスが俺達の部室にいたなんて夢みたいだな」



 スマホのワンセグで棚田クリスの書いた本が映画するとかしないとかで盛り上がっているテレビを見ながら満月は言う。

 三人はあれから重工棚田がマリアの埋め込まれていたソファーを回収し、全く同じ新しいソファーが送られてきたのだが、部室に行くのがなんだか気が引けずこうしてマクドナルドで部活もといだべり会を数日間連日開催していた。



「一番腹立つのは私等に何も言わずに転校した事だよな」



 ハンバーガーを二十個程トレーにのせるとそれをパクパクと食べだす茜。彼女もなんだか心ここにあらずと言った風で少し寂しそうだった。



「茜先輩ってやっぱりクリス先輩の事好きだったんですか?」

「は? んなわけねーだろ」



 そう言ってハンバーガーをミーシャの口に突っ込む茜を見て、満月もミーシャも同じ事を考えていた。


『あっ、こいつ完全に惚れてたな』


 と。

 見た事のない乙女な表情をする。食べる量も心なしか普段より多いのもまたやけ食い的な衝動なんだろうかとミーシャは考えていた。

 そんな中満月が話し出す。


「さて、部員達が少しナイーブになっているので部長の俺としては少しばかりレクレーションをと思っているんだ」



 そう言って見せた物。


『フレンドリーキャンプ体験』


 キャンプをするというまたしてもややズレている満月の提案。これが男子三人であればまだありだったかもしれないが、茜は女の子である。同じテントには入れないだろうし、彼女が一人でテントで寝泊まりもしないだろう。



「いいねぇさじ。豪気だね。いつのいくの?」



 乗った!

 まさかの乗り気だったという事にミーシャは聞いてみる。



「茜先輩。テント一人とかでいいんですか?」

「は? お前いじめっ子かなんかなの? 私をのけ者にするとか意味分からないんだけど」

「えっ? 逆に一緒でいいんですか?」



 それを聞いて茜は悪そうな顔をする。



「なになに? ミーシャ私に欲情しちゃってるの? けだものーとか言ってほしいの? 大熊だけに、というか小熊だけど」



 面倒くさい事になった。



「棚田マリアには理穂子はなれないって事だ」



 成程とミーシャは理解する。好きすぎて殺害にはならないだろう。むしろイラ立ちすぎてという事はあるのかもしれない。

 ひとしきりマクドナルドで時間を潰して帰る。棚田クリスの姉、マリアの骨が部室で見つかった事は文芸部の三人と重工棚田にしか知りえない事となった。

 あんな事件があった事よりも部員、あの棚田クリスが部からいなくなった事の方が皆の心の空虚の理由だった。

 三人は話す話題も見つからないまま帰路を歩む。そんな中あの撮影スタジオの前を通った。そこにはドレスを着たりセーラー服だったりとあの棚田クリスやマリアにそっくりなアンドロイドの写真が飾られていた。



「こうやって加工までされてると人間にしか見えないな」

「そうですねー」



 そんなアンドロイドの写真を茜はぽーっと見つめている。どんだけ好きなんだよとか思いながら、ミーシャも恋愛感情ではないがあの棚田クリスの事は大好きだった。満月に茜が同い年の兄姉なら、クリスは本当に優しいお兄さんと言った感じ。

 ふとそんな時にミーシャは思い出した。



「そういえば僕、この写真よりももっと、というか人間の棚田マリアさんに会ってるんですよね! あの疲れて部活休んだ日です」



 彼女は学校を指さすという謎の行動をしていた事を二人にいった。女装していたクリスかとも思ったが、その日は部活にクリスが参加していた事を茜と満月が証明している。



「ちょっと待てミーシャ、それってこのアンドロイドだったんじゃないか? よく思い出してみろ」



 よく思い出す。

 そしてやっぱり完全に人間だった事を二人に話す。

 茜と満月は月を見上げてながら落ち着いた顔をミーシャに見せた。



「お前あれじゃね? 幽霊的なやつに会ってない? それ……まさかだけど……私の身体あそこ的な意味あいだろそれ!」



 言われてみて段々ミーシャは鳥肌が立ってきた。そんな事ありえるのかという事、そして今から誰もいない家に帰らないといけないという事実。



「うわっだっせー! ミーシャびびってやんの!」



 ここで茜が実はホラーはダメだとか萌え要素があればまだ可愛いのになと思いながらミーシャは自分は結構そういう要素があってキャラが立つんじゃないだろうかと、現実逃避することにした。

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