第四話 助っ人登場

 パラパラと卒業アルバムをめくりながら、ラジオの放送を聞く文芸部の三人。殺人を犯した男は今だ黙秘を貫いており、犯行理由は分からない。

 だが、ミーシャ達、一欄台学園の学生達は、殺人を起こした者も殺された方も創立から五年目の卒業生。

 所謂埋蔵金を隠した最後の世代であるから、これが埋蔵金絡みに事件じゃないかとそう踏んでいた。

 そしてそれは文芸部の満月もそうだった。



「この犯人、横山英雄よこやまひでお結細隆ゆいぼそたかしを殺した。もし結細隆が最後のキーワードを持つ者なら、埋蔵金を隠したのはこいつで、独り占めしたくて英雄が殺した。これで大体終わりだろうな。四冊目の卒業アルバムは昨日ミーシャと調べて穴を掘ったけど結局みつからなった」



 満月とミーシャは創立年から四年目まで卒業アルバムを穴が開くほど調べた。



「俺達はここまでたどり着くのは他の生徒より遅かったと言ってもいいだろう。だが、他の生徒は五冊目の話を全くしない。それは何故だと思う?」



 電気ポットでお湯を沸かしてカップラーメンが食べれるまでうっとりしながら待っている茜を無視して満月はミーシャの返答を待つ。



「最後の年のキーワードが意味不明だから?」

「ふむ、ミーシャ。お前は中々賢いな。俺も五冊目を見ていないから分からんが……今日はこの文芸部に助っ人を頼んだ」



 それには茜も3分をタイマーしているスマホではなく満月を見る。まさか、あの古書店の店主か、それともブックカフェのオーナーか……と。



「我等が、Web小説の先生に来ていただく事にした」

「ちょっと待てよさじ! あの馬鹿が来るなんて聞いてねーし」



 ミーシャは会った事がないが、この人物に関しては何度か茜に聞いていた。絶対に関わってはいけないゴスロリ。

 キャラづくりが古書店『ふしぎのくに』店主とはケタ違いであり、さらに本人も頭のおかしさに関して次元が違うというもの。



「まぁ、いいだろう。あの人じゃないと分からない事もある」

「ねーよ! あのウザいゴスロリ見てると吐き気を催すんだよ! 私帰るわ」



 と茜が部室を出ようとした時、その女性は現れた。大学生くらいだろうか? 妙に露出の高い服を着た女性。



「この方が、そのゴスロリの……」

「「違う!」」



 二人はそう言うと、椅子とテーブルをてきぱきと用意する。そして満月は財布から五千円札を取り出すとそれを茜に渡す。



「これで何か茶菓子を」

「おぉ、分かった! 姐さん、ちょっと待っててよね!」



 少し癖っ気の髪だが身だしなみには気を遣ってそうな、こう言うとアレだがエロそうなお姉さんがやって来た。



「ミーシャは初めて会うな! こちらは、我々一欄台学園文芸部特別顧問の欄さんだ」

「宜しくっす! 話には来てるっす。ミーシャ君すね!」



 そう言って手を差し出す欄にミーシャも手を差し出した。とても人懐っこくて良い人。というのがミーシャのイメージ。



「わざわざ欄さんがどうして?」

「ヘカ先生、昨日エナジードリングの飲みすぎでお腹壊したから私が変わりに来たんすよ! はい、お土産にここの学校創立五年目の卒アルっす」



 満月はここの埋蔵金についての話をしていたのだろう。今満月達が欲しい情報を普通に持って来る。



「何処まで調べたんすか? 皆が朝練で書いてる小説の方はヘカ先生に持って行くっすね!」

「はい、お願いします!」



 満月のこの態度といい。はぁはぁと息を切らせて洋菓子を買って戻ってきた茜。



「まだ姐さんいる?」

「理穂子ちゃん、そんなに慌てて行かなくてもいいっすよ! ゆっくりして行くっすよ」

「姐さーん!」



 茜が飼いならされた猫みたいにベタベタと欄にくっつく。上目遣いに甘え、買ってきたケーキなんかを食べさせようとしていたりする。



「茜先輩、バイト先のメイド喫茶でそんな感じでやれば……」

「へぇ、理穂子ちゃんはメイド喫茶っすか! 可愛いから似合いそうっすね! 今度行きたいっす」



 欄には甘えるが、ミーシャを見る時、殺すぞという瞳を向ける。この欄が何故この二人にここまで支持されているのか全然分からない。



「欄さんはお二人の先輩とかなんですか?」

「まぁ色々っすね! その話は次回にして本題進めましょう!」



 欄がいる事で茜は異常なまでに協力的で大人しい。みんなで最後の卒業アルバムを覗き込み、その五冊目のキーワードを語る生徒の名前を見つける。



「おい! 最後の埋蔵金のメッセージを残した奴はやっぱり結細隆だ……」



 つい最近殺害された結細隆。そしてコメントには『俺に会いにこい』と書いてあった。そして彼に会う方法はない。ブラックジョークを言うなれば死ねば同じところにいけるかもしれない。



「これまでですかね?」



 ミーシャのありきたりな発言に満月と茜はちらりと欄を見つめる。今まで頼りになる先輩二人が思いっきり頼っている欄という女性。口元に手をあててふーむと猫みたいな口をしながら欄は考える。



「じゃあ会いに行くっすか? この結細さんを殺した人に」

「えっ!」



 驚くのはミーシャだけ、待ってましたという具合に満月と茜は小さい子がヒーローでも観るような表情を見せた。



「そんな事できるんですか?」



 一人だけ別世界に取り残されたようなミーシャ。欄は何処かに電話をすると世間話でもするように話す。



「りょーかいっす! ではお願いするっすね」



 欄は電話を切るとウィンクをしてみせる。



「今度の土曜日に刑務所尋ねるっすから、空けといてくださいね?」



 何者だこの人、というのがミーシャの考え、さらにおかしいのは自分だけだろうかと思っていた。茜と満月は全くおかしいと思っていない。

 欄は部活の後に皆を神保町のサイゼリアに連れて行ってくれた。どちらかといえば激安のファミリーレストランなのだが、特に満月の興奮は凄い。



「ここで毎月の紹介作品をミーティングしてたんですよね!」

「あはは、実は私も深くは知らねーんすけどね」



 晩御飯を御馳走してくれただけでなく、時間が遅いからと帰りのタクシー代も出してもらった。そして一番は、茜である。

 欄は、茜は可愛いんだからお洒落しねーとダメっすよと言って茜の髪型を変えて化粧を施す。欄の前ではしおらしい故にミーシャはいつもより茜が実に可愛く思えた。



「何じろじろ見てんだよミーシャ」

「いや、茜先輩可愛いなって……」



 思いっきり腹を殴られたミーシャ。照れ隠しなのかは分からないが、リアルに暴力キャラは普通に危険性しかない。

 それを可愛いと思う連中を心底恨むミーシャ。



「痛てて……そういえば、帰りに桐ヶ谷先生と欄さん、何か言ってましたけど知り合いなんですかね?」



 それには満月や茜も理解が無かった。



「確かに知り合いっぽかったな。顧問も休職してたとか経歴が微妙に不明な奴だからもしかすると欄さんみたいに顔が広いとか?」

「ありえねーよ」



 欄崇拝者である茜はミーシャの担任であり、文芸部の顧問がそんな特別である事が許せないのだろう。

 帰りにブックカフェに寄って帰ろうとか話していたが、最近まともに執筆活動が進んでいないので各々家で自作の製作をする事になった。

 ミーシャはもう少し二人と一緒にいたいなと思ってたが、しかたがない。

 誰もを言ってくれない家へと帰る。

 パシャリ!

 フラッシュ。ミーシャが写真に撮られたようだが、あまり気にしなった。よくある事、いつもの事、ミーシャの姉を狙ったパパラッチだろう。



「ほんと、世の中暇な人が多いな」



 欄に夕食はごちそうしてもらったのでコンビニで作業用の飲み物として、紙パックのコーヒー牛乳を買うとミーシャはパソコンに向かう。

 異世界転生でトラックに轢かれるという描写に関してもう少し自然にできないだろうかと考えて満月の指摘を思い出す。



「ここはリアルじゃなくてもいいんだよね」



 果たして自分は本当に小説を書く事が好きなのか最近分からなくなってきていた。毎日のお見舞いは良いと言われたのでせめて週一でみずきの見舞いに行く時も、自分は誰かとの繋がりを欲しているだけで、それは別に文芸部じゃなくても例えば野球やサッカー等の運動部。

 あるいは放送部とかの文化部とか……

 少し考えて自分みたいな特異な人間がうまくやれる場所なんてそう多くはないだろうとミーシャは思っていた時、満月からラインが入る。



「満月先輩だ」



 その内容は茜について、彼女は極めて優秀な頭脳を持っているが、心の方はそうではない。他者と感覚が違いすぎる。

 そんな事はミーシャも良く知っていた。冗談気味にそんな事は知っていますよとスタンプを送ったところ、帰ってきたものはこうだった。


『茜ヶ埼理穂子はだ。まぁ、理解してやってくれ』


 ミーシャにも聞いた事はあった。特化型の天才、そして大抵協調性が皆無である。それで担任は茜に留学を勧めていたのかと合点がいった。

 そんな茜の能力ちからを知るのは、ミーシャ達が結細隆を殺害した犯人横山英雄に会った時にはじめて知る事になる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます