第二章 学園埋蔵金

序章 一欄台学園の噂

 それはミーシャ達が生まれるずっと前の一欄台学園付属。

 それも第一期生の卒業式の日だった。それは夜も遅いというのに、二十数人の生徒達が分厚い封筒を持って集まっていた。



「諸君等が集まってくれた事、感謝する」



 それは生徒会長として三年間、学校の創立から生徒達の為に従事し、時には教師と共に生徒達の敵となり、時には生徒達の盾となって教師達と戦ってきた。生徒達の代表、本日卒業するまでこの学校に在籍していた元生徒会長。

 そしてその生徒会長の右腕、左腕として活躍された副会長と書記、彼らに集まってきた生徒達は分厚い封筒を渡していく。

 その中身を取り出すとそこには千円札の束、それを数えていくと副会長、そして書記は「確かに」と一言述べると次々にそれらをブリキの箱の中へと詰めていく。



「会長、質問があります!」



 応援団のように綺麗な姿勢で手を後ろに一人の生徒がそう言った。



「なんだ?」

「年々、カンパをして資金を増やしていくのは賛成であります。が、大金になればなるほど、邪な気持ちを抱く者が現れるのではないでしょうか?」



 生徒会長はふふんと笑う。



「君は我が校にそんな不逞ふていの輩がいると、そう言いたいのか?」

「あっ、いえ……そのような事は」



 他に集まっていた生徒達からもギロりと睨まれ、圧倒される。こうなったら本心を真直ぐに出すのは難しい。



「あっ……いえ」



 何か言い訳を考えていた時、元生徒会長は言った。



「君は正しい。そうだ、誰一人として信用できる人間なんてものは存在しやしない。悲しいがそれが現実だ。人間を一番惑わせてきた麻薬はこの、金だからな」



 千円札の札束を掴むと元生徒会長は質問した生徒を絶賛した。



「そう、俺を含めてすべて信用できない。だから、数年間かけて我々はお互いを監視する。さらに、この金、埋蔵金の埋める場所は年毎に変えていく。年が変わる度に場所のヒントを卒業アルバムを持って共有する」



 そう高らかに言い放った元生徒会長に対して、ここに集まった生徒達は不安でしかなかった。これ程の大金を集めて、盗まれましたでは済まない。



「諸君等が不安に思う気持ち痛く分かる。この金の保管は細心の注意を払う事を誓おう。そして年毎に埋める場所が変わってもその埋蔵金が盗まれない方法も考えている。まずはここに用意したブリキの箱。それを今年の指示があるように、埋めていく」



 それは何年も続いた。

 しかし、それも五年も持ちはしなかった。時代の移り変わりと共にこの泥臭い風習は誰にも見向きされなくなった。

 それから最初の頃は埋蔵金が隠されていると、不法侵入し、トラック付近をほじくり返す生徒達。

 探せど探せど、埋蔵金は見つからず、そもそもそんな物は存在しなかったのだろうと忘れ去られていた。

 それから時は経ち、平成最後の年。

 学生食堂で、中庭の休憩スポットで……この学校に埋蔵金があるのではないかという話が何処かから漏れた。

 連日、スコップを持って学校の敷地内をうろつく生徒達。

  

「何っ! 数百万の埋蔵金がこの学校に?」


 モバイルパソコンをタイプしながら、周囲で生徒達が話している情報を集めていた。一息つくと文芸部部長。

 満月さじはスマホで二人を呼んだ。

 それは長い長い、夢を探すような事と同義の埋蔵金騒動がミーシャ達を待っている事等、誰もしるよしはなかった。

 始まりはそこから、これが後に語られる一欄台学園埋蔵金騒動である。


           

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